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I'm so glad that I met you xoxo.

黒豹は夜を切り取らない。

16
2017  05:31:40

アクマでも、キミがキライ。5-SOLID/LIQUID-

deviliknow5.jpg

しずまるおと たかなるむね
ちかづくきょり ときがとまる


年齢制限タグ発生原因:三十路過ぎが本気出し始めた。
全年齢対象だから読んでたのに、という方、申し訳ないです。
タグは、
1:18禁がキライ・苦手な方のために便宜上
2:それなりのシーンがあるので
つけました。
えろ描写の長さや濃度は大したことないと思います。
三十路過ぎの存在と行動が性的なだけです。
その成分目当てだとかなり肩透かしを食らいます。

Solidは、かたいもの、たしかなもの、まじりけのないもの。
Liquidは、ながれるもの、ふたしかなもの、じゅんすいなもの。
男性と女性とか。からだとこころとか。今と未来とか。なにやらモロモロ。

《注意事項》
あ、ばあちゃん、オレオレ、俺だよ俺、うん、スクカー。(詐欺)
清掃員さんの構成要素
 :いかがわしさ、胡散臭さ、ヲトナの余裕、下世話さ +ヤる気←New!
ゴスミカさんやはりがーりぃ、乙女極まり過ぎ
「トワイライト」のネタバレアリ
(映画・小説共に未見未読のまま、知ってる範囲であれこれ書いております。
やや適当とはいえ、未鑑賞の方はお読みにならない方が良いかと思います)
いちばんデレてんのもしやゴスミカさんじゃなく清掃員さ(ry

5つ目のお話に。お付き合い下さっている皆様、ありがとうございます。
スクールもカーストもないですが大丈夫ですか。
ちょくちょく黒い三十路過ぎが楽しそうなだけですが怖くないですか。
ミカサが乙女過ぎてドン引きしてませんか。
少女まんが過ぎて困ってませんか。
電源コードがコンセントから外れていませんか。
    ↑
…いや、取説の「故障かなと思ったら」みたいだったので。

キャラは粉砕済、何もかもが捏造。
どんなリヴァミカでも大丈夫な方のみ、どうぞ。

大丈夫かな、コレ。萌え要素あるんだろうか…。
恐怖しかなかったらすみません。

20170910→ splash-aqua-water.jpg

ミカサは大きなバスケットを持って立っていた。
白のブラウスはベル・スリーヴ、黒のフード付きのケープを身につけている。控えめなパニエで少しばかり膨らませた黒のスカートの広がりが可愛らしい。白のニーハイソックスに黒のエンジニア・ブーツを合わせ、コーディネイトをわずかに崩している。
まだ午前中の町並みにはややそぐわない。おそらく、何時間経過しようとそぐわないのであろうが。
家から少し歩いたひとけの少ない通りで、ミカサはリヴァイの迎えを待っていた。

「何入ってんだ、それ」
リヴァイは車を降りると助手席側にやってきてドアを開いた。手からバスケットをさらう。
「ナイショ」
シートを前倒しにしてリア・シートにバスケットを置いた。
「生首とかじゃねえよな」
「……今度入るかやってみる!」
「オイ。どっから首調達する気だ」
「やっぱり、お墓?」
「真顔で言うんじゃねえよ。……遺体安置所の方が鮮度良くねえか」

それぞれがどっちもどっちだと気づけない辺りは似た者同士なのかもしれない。

リヴァイに表情で促され、ミカサは車にするりと乗り込んだ。スポーツ・カーは一般的に乗りにくいのが結構な欠点であり難点なのだが、女性故か行儀の良さ故か、ミカサはいつもすべり込むように美しくシートに収まる。
「リヴァイ、ありがとう」
「ん」
ドアを閉め、運転席に戻ると、エンジンをかけた。
「車、替えるか…」
「どうして?」
「荷物、あんまり載せられねえからな。ひとりで乗るだけ、適当に走らせるだけなら、コレで十分だったんだが。お前の買い出し手伝ってやるにも、コレだと役に立たねえだろ」
「…………わたしのせい?」
「そういう時はな、『私のため』って言っとけ」
ミカサは落ち着かない様子でスカートの膝の辺りを指先で弄んでいる。頬に赤みが宿っていた。
「燃費いい方でもねえしな。走りは気に入ってんだがお前も乗せるの考えたら替えた方がいいだろ」
「……イヤじゃないの?」
「シート倒してお前に悪さすんなら、広い方が楽しいだろ」

べしっ。

「痛えんだよ」
「ヘンなこと言うから!!」

信号待ちをしている最中にミカサに腿をはたかれたリヴァイは、何でもないような声で抗議した。赤くなるミカサを横目で見る。

「ひとけのねえとこ行って、試してみるか」
「もおぉう! 余計なこと言ってないで、ちゃんと運転して!」
「部屋で悪さされる方がいいか。わかった。急ぐ」
「リヴァイの馬鹿! 馬鹿!!」

信号が変わり、車はする、となめらかに走り出した。この走行のなめらかさこそがスポーツ・カーの良さのひとつだ。
それを棄てるのは、平気なの?

「お前、これから森抜けてばあさんとこにオトドケモノでもするみてえだな」
「だとすると、コレ、黒ずきんちゃん…?」
ぽふん、とフードを被って見せた。
「俺はさしずめ狼か」

待ち伏せどころか、イマドキの狼は迎えにきてくれる。親切この上ない。
狼の腹を裂いて助け出してくれる猟師のパパや、食べられないように気をつけてと言ってくれるママは、今日もオシゴトで忙しい。

――狼担当は悪くねえな。猟師が居ねえってのが尚更いい。

狼が親切なのは、いずれ美味しく食べるため、かもしれない。
女の子はママの言いつけを守らずに、森の奥深くへ踏み込もうとしている。

だって、怖くないもの。狼って、やさしくてすごくあったかいの。
知らなかったでしょ? 


――本当に大事な娘なら、檻にでも入れて鍵かけときゃいい。でなきゃ、…………俺がもらう。



「ただいま」

最近は、こちらでそのことばを言うほうがしっくりくる自分が居る。
リヴァイのアパートに入ると、ついこっそりとつぶやいてしまう。

「…おかえり」

聞こえていたのか、リヴァイがミカサの頭に手を回して引き寄せ、唇に唇を重ねた。
奪われるような深いキスも嬉しいけれど、ふいに軽く淡いキスをされるのもどきどきする。そっとやわらかく触れてくれるので、大切にされていると感じられる。

それから、「おかえり」のことば。何よりも嬉しい。ここが、本当に帰る場所になればいいのに。このひとの居る場所が、帰るべきところならどんなにいいだろう。

「で? 生首じゃなくて、なんなんだ、ソレ」
「お邪魔させて頂くから、色々差し入れ」

ミカサが最初に訪れた時には、ダイニングにテーブルと椅子はなかった。今はこぢんまりとしたテーブルと二客の椅子がある。時折こんな風に、「もうひとり」の存在をも意識してくれていることがわかる変化が生じている。
テーブルの上でバスケットの蓋を開くと、甘く香ばしい香りが溢れ出した。
「これ、どうした」
「焼いた!」
マフィンやスコーンが入っている。わざわざ可愛らしいラッピングまで施されているではないか。ジャムや蜂蜜の瓶やらも一緒に詰まっているのが見えた。なかなかの量だった。
「全部か」
「うん。…こういうの、キライ? 迷惑だった?」
「そうじゃねえよ。お前、…何時に寝て起きた」
「そんなに、難しいのは、つくれないし、つくってない」
「何時に、寝て起きた」

う。張り切ってたから眠くなかったし、楽しかったから気になってなかった、んだけど。

「答えられねえか」
「イヤだったら、そう言ってほしい」
「ちゃんと寝てねえんだろ。無理されても嬉しかねえな」
「無理は、してない。……準備してる間も、焼き上がるの待つ間も、すごく楽しかった。だから、……怒らないで」
「……クソ。怒ってねえよ」
「でも、眉間の皺。いつもより深い」
「元々こんなだろ」
ミカサは思わずその眉と眉の間にキスをした。自分の方が背が高くてよかったと思える数少ない機会を有効に活用した。
「……りねえ」
「え」
「足りねえ。もっと寄越せ」

何で急に可愛くなるの。目も見ないで言うとか、なんなの。私より、ずっと年上のクセに。ズルい。

リヴァイがそうしてくれるように、両の頬を手で包んで、唇を寄せた。
怒りながらでも叱りながらでも結局は私にやさしい。ズルいひと。そんな風にされたら逆らえない。

「何で眉間だけなんだよ。フェティッシュなシュミでもあんのか」

このひと、こんなに可愛かった?

「だって、リヴァイ、目を閉じてくれないから」
「このトシで野郎が目ェ閉じてキス待ったら気色悪いだろうが」
「可愛いから大丈夫」
「お前な、」

ミカサの唇を受けて、リヴァイが黙った。同時に、リヴァイの手が小さな両手を掴み、自分の首に巻きつけさせると、抱き寄せてキスを返した。

「――カサ。ミカサ」
「え、あ、」

キスで呆けてしまうのもいつものことだった。何度されても慣れない。むしろ、以前よりも気持ちいいと感じる。耳の後ろ辺りからざわざわと何かが背に向けて走り出して、もっと欲しいという感覚に支配される。口に出しては言えない。けれど、きっと悟られている。

「今日は、何して過ごしたい」
「一緒に居られれば、何でも嬉しい。でも、一応退屈しのぎになるもの持ってきた。DVD。再生出来るもの、ある?」
「ある。何持ってきた」
「『トワイライト』! と、あとちょっと毛色の違うヤツ」
「……お前が好きそうだな」
「ちょっと懐かしい『バフィー』と『チャームド』も結構好き。『トゥルー・ブラッド』も『ヴァンパイア・ダイアリーズ』もいいの。でもね、やっぱり『トワイライト』! 完璧な容姿でベルベットみたいな声で真っ白な肌をした男の子が誕生日に自分のためだけに子守唄をプレゼントなんて、すごくロマンティック! それが吸血鬼の男の子なんて! でね、ヒロインはずっと一緒に居たいからヴァンパイアになりたくて、ヴァンパイアの男の子は大好きだからこそヴァンパイアにしたくないと思ってるの! そこがせつなくて好き。実は、原作の小説の方がもっといい。自分が想像した姿でキャラクターが動くから」
ミカサは楽しそうだった。
「……オンナノコだな、お前も」
「今までオトコノコだとでも思ってた?」
ぷう、と少しだけふくれている。
「このやわらけえのが野郎なワケ、あるか」
頬をぶに、とつままれた。

「あ。そういえば、テレビ、ない」
頬をつまむ手をのけて今更気づいたことを口にした。照れているらしい。
「寝室に置いてある。プレーヤーもな」
「そうなの?」
「あまり見ねえし、寝る前にちょっとニュウス見たりするくれえだしな」
「行儀悪いけど、食べながら観ようと思ってたの。こっちでまず食べてから移動した方がいいみたい」
「そうするか。ああ、皿とか必要か」
「大丈夫。ピクニック用の、持ってきた!」
「お前、どんだけ用意周到なんだよ。荷物が重たくなっただろうが」
「洗い物とか出したくなかったから。ナプキンと使い捨てのカトラリィもある! お店で可愛いのを見つけて、つい買ってしまう…んだけれど、よく考えたら使う機会がない。ので、使いたいから持ってきた。気にしないで欲しい。念のため、三、四人は余裕で座れそうな大きいクロスも持ってきてる。ソファで食べるとしたら、敷いたら少し掃除の手間が省けるかと思って」
ミカサが少し得意げに生成りに濃紺のウィンドウ・ペンのチェック柄のクロスを取り出してリヴァイに見せた。開いて使った形跡が見て取れない。真新しげなプラスティックの袋に折り畳まれて入っている。

家族で使いたくて購入したのだろうか。リヴァイはミカサの横顔を見つめる。バスケットの中のものを確認しているミカサはとても嬉しそうに見えた。子供がお気に入りを詰めたバッグの中を覗きこんでいる姿を思わせる。

「これから、使う機会、つくればいい。だろ。今度、どっか行くか」

声が甘く響く。意地悪なクセに、誰よりも私にやさしい。

「いいの? ホントに? だったら、すごく嬉しい。楽しみにしてる」
「おう。ピクニックに向いてるとこ、探さねえとな」

ミカサはリヴァイに顔を向けようとしなかった。

「あ、リヴァイ。お茶に関するものだけは、リヴァイのを使わせて欲しくて何も持ってこなかった。それと、これ」

少し俯いたまま、小振りの紙袋を差し出した。

「何だ」
「紅茶。お店で試飲したら、美味しかったから。リヴァイにも飲んで欲しいと思って」
「ミカサ」
「なに」
目は、合わせないまま。
「今度からな、身体ひとつで来い。荷物も財布もイイコのフリもお行儀の良さも、全部家に置いてくりゃいい。お前以外、無くても構わねえよ」

意地悪なくせに。もしかして、だから、そんなことを言うの? ヒドいひと。ヒドくて、やさしいひと。

「…………うん」
「今日の紅茶は、お前が持ってきたヤツ、淹れる」
「うん」

ふいにリヴァイがその場を離れて玄関から続く廊下に向かった。ミカサは慌てて手の甲で目を拭う。

「お前、着替えてこい。メイクも落とせ」
戻ってくるなりそう言い放った。
「え」
「言っただろ。俺のベッドは化粧の類は厳禁だ。お前がすぐ食えるもの持ってきてくれたからな、食い終わったらすぐ移動だ。映画はそれなりに尺あるだろ」
「わかった」
ただ座って観てるだけでも、ダメなのか…。しかも、主に目元と唇だけなのに。これが「潔癖が過ぎる」ひとたる所以なのかもしれない。それでも、今は、この申し出がありがたい。顔を洗ってすっきりした方が良さそうだった。

「これ着ろ」
リヴァイが腕にかけていた数枚はあろうかという白い布をミカサに差し出した。
「……これは、」
「部屋着だ。外で着るのとは、別に用意するもんなんだろ」
こ、こんなに? ミカサは受け取りながらしげしげと「部屋着」を見つめる。しかし、パニエまで身につけた自分には、突っ込む資格はないかもしれない。ソファや椅子に腰掛けてDVDを観るくらいにしか考えておらず、好きな手持ちの衣服で出来る、可愛く見えそうなコーディネイトで来てしまった。
「それは一体、どこのご令嬢なの…」
手にした「部屋着」にはフリルやレースが見え隠れしている。
「あ? そりゃ俺のご令嬢だろ。オラ、とっととバスルーム行ってこい。洗顔に必要なもんと部屋履きは洗面台に揃ってるから適当に使え」

ミカサは部屋着を抱えて歩き出した。ご、ごれいじょうは冗談で言ったのに、…。俺の、って。
リヴァイには驚かされてばっかり。
涙、引っ込んでよかったけど、今度は顔が熱い。


「リヴァイ! なにこれ可愛い! すごく可愛い! リヴァイ可愛いモノ好きなの!?」
勢い込んでリビングにミカサが戻ってきた。メイクもなく年齢相応の愛らしさが際立つ。
「お前が好きそうなの選んだだけだ」
「フリルとレースとリボン! 総コットン! 可愛い! なにこれ!」
「お前、その言語力で英語学年二位なのかよ…」
リヴァイが用意した部屋着は三アイテムで成り立っている。スクエア・ネックでスリーヴレス、少々丈の長い総ボタンのタンクトップのようなトップス、ドロワーズ、ガウンの三点で、白一色にピンタックや細やかなレース、アクセントに数ヶ所リボンがあしらってあった。フリルがたっぷりで豪華なヴィクトリアン・スタイルの風情がある。おまけに、洗面台のそばに可愛らしいバブーシュが置かれていたので、それに履き替えた。
「だって、すごく可愛い! どこでこんなの見つけてきたの!? あのお店?」
「まあな。お前連れてったから、その時の服でアタリつけて、いくつか用意してくれた。その中からソレ選んだんだが、とりあえず正解か」
「すごく嬉しい! でも、」
「なんだ」
「あの、……お金、遣い過ぎ。コットンでも、こんなに縫製に手間がかかるものは、安価なはずがない。洗面台に、コールドクリームとか洗顔用の石鹸とかお手入れ用の化粧水とか、色々あったけど、…私には買えないような高級なラインぽいのばっかり。用意しろって言ってくれれば、持ってきたのに」
「また荷物増えるだろ。よくわからねえから肌に負担少ねえヤツで探して適当に選んだだけだ。気に入らねえなら、」
「そうじゃなくて。私のためにそんなに遣わないで欲しい」
「お前が用意した食い物は、材料の粉やら塩やら、庭の土からでも生えてくんのか。違うだろ。お互い様だ。…今後はちゃんとお前に相談してからにする」
「うん……。リヴァイ」
「ん」
「沢山、ありがとう。ホントに嬉しい」
「おう。茶淹れるから、食うものの準備、頼んだ」
「ん」


「お前、…コレすげえな。全部自分で焼いたのか」
「うん。でも、味は自信がない。リヴァイ、舌が肥えてるから。スコーンはライ麦粉、マフィンはバナナとブルーベリィの二種類、パイはペパロニとパプリカと玉ねぎのフィリング」
ミルクガラスのような色のプレートにはマフィンとパイとスコーンが盛られている。ジャムはラズベリィとマーマレイド。蜂蜜も待機している。
どれも綺麗な焼き上がりだが、ミカサ曰く焦げたものは除いたから、らしい。
「もらおうか」
「う、ん。食べて」
リヴァイが皿からマフィンを取って両手で半分に割いた。
「ミカサ」
「なに」
「そう睨まれると食いづらい」
「ごめんなさい、つい」

リヴァイがもくもくと食べるのをこっそり見ながら、ミカサは自分でもマフィンにかぶりついた。

「うまい」
「ホントに?」
「ん。店に売ってるのよか、うめぇ」
「そこまで気を遣わなくても、」
ミカサは木で出来たナイフでスコーンを切って半分にするとリヴァイの皿に置いた。気恥ずかしくて顔を直視出来ない。
「ヴァニラの香りが嘘くさくねえな」
「ヴァニラ・ビーンズ使ってみたから。香料じゃなくて、そのものだから、すごく香りがいい。こう、莢から扱き出して、使うミルクに浸して、香りを移したの」
「それでか。コレ、売れるレベルだろ」

やさしい。でも、そんなに褒めてくれなくても。……父や母も、何かつくると、必ず手放しで褒めてくれるのだが。
ミカサは思い出す。
久しくゆっくりと家族では食事出来ていない。いつもどこか忙しなく、こんな風に落ち着いて「誰かと一緒に食べる」のは満たされることだというささやかな豊かさを、忘れがちになってしまう。

リヴァイと一緒だと、すごく楽しい。

ウォール・ハイのカフェテリアでエレンやアルミン、今では時々サシャや、サシャと仲がいいらしいコニーともランチを食べることがある。何故かテーブルの延長線上にジャンも居たりマルコの姿が見えたりもする。それももちろんとても賑やかで楽しいけれど。
こんなに自分の中が満たされる気持ちになれるのは、このひとと一緒の時だけ。

「紅茶も、美味いな」
「ホント? 良かった。どことなくとろっとしてて、美味しいな、と思って。中国の、コングー紅茶、とか言うみたい。薔薇の花弁も入ってて、香りが良くて、まろやか。砂糖ナシでもどこか甘いカンジがする」
「ああ、悪くねえ口当りだな。……色々、ありがとうな」

あ。ほんの少しだけど。今、笑ってくれた!

「でもな、余計な気ィ遣い過ぎだ。ガキは黙って甘えてろ」
「もう。ひとこと、余計」
「お前、甘えるのヘッタクソだからな。ここでおぼえていけ」
リヴァイはミカサが半分に切って寄越したスコーンにマーマレイドを乗せるとミカサの口に押し付けた。小さな手がそれを受け取ると、小さな口でかじる。それを見てから、今度は残った半分にもマーマレイドを乗せて食べた。
「リヴァイには、甘えっぱなしなのに」
いつも。なにもかも。寄りかかっても抱きしめてくれるのをいいことに。
「そうでもねえな。電話もメールも、お前あんまり寄越さねえだろ」
「だって疲れてるかもしれないし、」
「気にするところがお前らしいな。何時だろうが、好きな時に寄越せ。溜め込みやすいだろ、お前。ガス抜きくらい付き合ってやる」
「……うん。ありがとう。でも、いつでも連絡出来るって、わかってるだけで、すごく安心する」
「そうか」

自分がつくったものを美味しいと言って食べてくれて、紅茶を淹れてくれて、一緒に居てくれる。与えられ過ぎてもらい過ぎて贅沢なのに、それでもまだ足りてないって言ってくれるの?

「リヴァイ。カップ、空になってない?」
ポットを手にすると、リヴァイがスコーンを咀嚼しながら目で促したので、紅茶を注いだ。



リビングを後にして、寝室に向かう。初めてだった。
「入れ」

ドアを開くと入るように促された。ミカサは思わず部屋の中を見渡した。思っていたよりも広い。ベッドはシングルサイズではなく、クイーンサイズくらいはありそうに見えた。壁に沿ってL字型に腰壁ほどの高さのチェストや棚が配してある。テレビはベッドと向かい合うようにして設置されていた。その下にオーディオ機器を収納出来るスペースがあり、ディスクの再生機と思しきものが見えた。
小柄なひとなのに。こんな広いベッド、さみしくないの? 
本、結構ある。
大きめの窓と、シンプルなカーテン。ベッドと同じアースカラー。壁は少し深みのある、…藍色?

「どうした」

背後からの声は耳元ではじけた。

「広くて、綺麗。雑誌で見るみたいなお部屋」
「そうか? モノが少ねえだけだろ」
「お掃除が好きなだけある。整ってて。すっきりしてる」
「今ディスクセットする。お前、好きなように座ってろ」
「ありがとう」
「そういや、『トワイライト』以外に持ってきたの、何だ。やっぱり、パラノーマル系なのか」
「ううん、『BONES』」
ミカサは法人類学者の女性が遺体の骨から事件の真相を導き出すドラマの名を上げた。
「…お前、メシ食いながらグチャグチャの死体映像観るつもりだったのかよ、…」
「リヴァイが気にしなければ、だったから。食事終わってるし、まだ観てもいないし、結果的には問題ナシ」
「オイオイオイ…」

ミカサはベッドのそばに立っていた。

「座ってろって言っただろ」

リヴァイがベッドに上がると手を差し出した。

「来い」
「うん……」

片膝を載せた瞬間、思い切り良く引き上げられた。抱きとめられて、束の間見つめ合う。

「リヴァ…!」
「ベッドで待ってるより、誘われたい方か。憶えとく」

並べられた枕をクッション代わりに背にした状態で座らせられた。

「び……びっくりさせないで欲しい……」

リモコンの操作でプレイヤーが起動する。

「ヴァンパイアもの、好きなのか」

画面には黒髪の美しい少女が映っている。
雨が降ってばかりの町はどこか不穏で、何かが起こりそうな雰囲気を盛り上げる。太陽が輝く陽気さはそこにはない。
肌の白い、赤い唇からわずかに鋭い犬歯ののぞく美しい少年とヒロインとの、くすぐったいようなもどかしい会話。
少し哀しげで美しい音楽。
視線が合うと交わし、見つめ合ったかと思うと逸らす初々しさ。
何度観たかわからない。
エレンに、一緒に観ようと誘ったけれど、断られたことを思い出した。…エレンは、こういうロマンティックなの、ダメかも。だったら、何なら面白いって思うんだろう。アクションものっぽいのならいいのかも。アルミンは、一緒に観てくれそうだけど。
リヴァイは、私が観たいって言ったら、何でも我慢して付き合ってくれるような気がする。

「うん。だって、ロマンティックだし、せつないでしょ? 人間は死んじゃうけど、ヴァンパイアは基本不老不死で、ずっと同じ時間は生きられない。一緒に居たくてヴァンパイアにしちゃうのも、自分と同じ辛さは背負わせたくないからしないのも、どっちも大切な相手だからそう思うの」

リヴァイも背を枕に預けた。左手が膝の上に置いていたミカサの右手をさらった。長い指が、くすぐるようにミカサの指と指の間を縫って絡みつく。
ミカサの身体がぴくん、と跳ねた。
そのまま手を握られた。腕を試しに引いてみたが、解放する気は無さそうだった。

映画観てる間、ずっと握られてたら、どうしよう。心臓ばくばくしてて、伝わりそうで、ちょっと恥ずかしい、んだけど。

「小説で読んでる時は、このヴァンパイアの男の子、……リヴァイの姿で思い浮かぶ」

心臓の落ち着かなさを誤魔化したくて、埒もないことを話し出した。自分の好きな話題なら、気が紛れるかもしれないし。

「年齢的に無理あり過ぎだ。あっちは高校生なんだろ」

すり、と長い指が僅かに動いて手をくすぐる。そのたびに、反応してしまう。

「だって、リヴァイちょっと童顔だしどっちかって言うと肌白いし、ダーク・ヘアでしょ? 何より、よくわからない不思議なヒトだし。高校生に見えて、ヴァンパイアだから、内面はそれ以上の年齢なの。ちょうど真逆?」
「悪魔の次はヴァンパイアか。どうあってもアンチ・クライストにされんだな」

「ん!」

指に絡みついた指が、蛇のようになめらかに巻きついて締め付ける。そうかと思うと緩み、指の間をくすぐり、また絡まってくる。

「どうかしたか」
「なんでもない!」
「くすぐってえんだろ」

わかってやってるの。やっぱり。意地が悪い。そういうところ、キライ。

「う…ん、」
「手は、感じやすいからな。それか、……お前が敏感なんだろ」
「!」

テレビの音声も映像も頭に入ってこない。大好きな映画で、いつ観ても夢中になってるのに。

頭の中に、リヴァイの声しか響かない。落ち着いてて、低くて、やわらかくて、……甘い。
でも、イヤ。聞きたくない。身体が熱くなる。

「この映画、野郎と観るのは、勧めねえな」

ふ、と小さく震えるような甘いため息がもれたのを、リヴァイは聞き逃さなかった。

「どうして? 男のひとは、やっぱり、ロマンティックなのは、あまり好きじゃない?」

手に、自分の神経の全てがあるような気がしてしまう。親指の腹が、ミカサの親指の付け根の下のふくらみを撫でた。肌が粟立った。投げ出すように伸ばしていた足を、思わず自分の身体に引きつけていた 。

「いや。ロクでもねえことしか、考えねえからだ」

手がさらわれて、何かがやさしくくすぐるのを感じた。持ち上げられている高さから言っても、ひとつの可能性しか考えられない。

「あ、」

てのひらに唇を押し当てられて、ミカサは上げたくもない声を上げた。

「退屈だから早く終わればいい、とか、そういうこと?」

声が震えたような気がする。

「わかるだろ。昔からよく言うじゃねえか。吸血ってのはセックスのメタファだって」

今度は、手の甲に唇の感触があった。足の指にどういう訳か力が入ってしまう。きゅ、とミカサの爪先が丸まったのが、リヴァイの視界をかすめた。

「狙われるのは大抵穢れを知らねえ乙女だ。鋭い牙を無理矢理突き立てられて、最初は恐怖と動揺と痛みで眉を顰める。それが、どういう訳かだんだんうっとりした表情で相手の腕の中でされるがままってのが、定番だろ」
「そ、そうなの、」

手首にキスをされたかと思うと、濡れた感触が肌をたどった。

「や、…!」
「どうかしたか」

耳に唇を押し当てられたまま、ささやかれた。身体中にぞくぞくするのに燃え上がるような感覚が駆け巡った。鎖骨から上の見える範囲は全て赤く染まっている。まなじりに滲んだ涙を、舌先にさらわれた。

「や、リヴァイ、」
「こっち向け」

引き寄せられて、唇も呼吸も奪われる。
やさしいのに、何もかも剥ぎ取られるような感覚。どうしていいのかわからない。顔を背けたくても、それをさせてもらえない。唇が離れようとしては許されず触れ合うせいで、濡れた音が響く。

「寝室に誘われてんのに、のこのこついてきやがって」

は。
は。ふ、

間隔の狭い小さな乱れた息が小さな口をついて飛び出してはわずかに空気を揺らす。左目からこぼれた涙が頬を伝っている。

「だって、」
「フツウ、断るだろ。そこにテレビがあろうが何だろうが。危機感ねえのか」
「どうして怒るの。一緒に居たいって、思ったらダメなの。なら、どうしてここに、」
「俺に、…………何かされたらどうする」

目が、射抜くようにミカサを見つめている。ごく僅かに青みを帯びた淡いグレイの瞳が、いつも以上に美しく見えた。

「そうする価値くらいは私にもあるのかもしれない、って、そう思える。いつも独りで気の毒で可哀想なコだから一緒に居てくれるんじゃないって」
「お前、自分を何だと思ってんだ」
「リヴァイ。ベッドが大きいのは、一緒に夜を過ごすひとがいるから?」

濡れた目も唇も。だだをこねて泣くだけの子供のそれに見えれば、どれほど良かったか。甘えるような拗ねたようなか細い声は、女のものでしかない。腹立たしいほどに。

「このアパートに入れた女はお前だけだ、このクソガキ」

急に引き寄せられたかと思うと、押し倒された。ミカサは天井すら満足に見えなかった。覆いかぶさる影がある。

完璧な容姿でベルベットみたいな声で白い肌をした――人間でも悪魔でもヴァンパイアでも、何だっていい。永遠に一緒に居られるなら。

「リヴァイ。聞かなかったことにしてもいいし、忘れてくれてもいい。受け取ってくれる必要もない。嘘だと思ってもいい。ただ、伝えておきたいだけ。本当のことだから言っておきたいだけ。こんな風に思うのは、初めてだから。多分、一度しか言わない。あのね、…………だいすき――」

それ以上は言えなくなった。飲み込むように深いキスをされて、息も出来ない。

魂でも何でも持っていけばいい。地獄に堕ちたっていい。このひと以外、要らない。
私の願いをかなえられるのは、神様じゃない。

リヴァイだけ。

「ひとの退路を断ちがやって」

叩きつけるような口調なのに、射抜くように睨まれているのに、この男をどんな誰よりもやさしいと感じる。ミカサはただ黙って自分を覆う影の主に見入っていた。

「後戻り、出来ねえぞ」
「しない。要らない」
思わず手を伸ばして、薄い唇に触れた。
「なら、ちゃんと言え。そしたら、お前のものになってやる」
ミカサの手を取り、そのてのひらに唇を押し当ててから、ベッドに押し付けた。

フリルでトリムされたガウンの合わせ目に手をかけた。壊れやすいものを包む薄紙を引き剥がすよりもあえかな手つきで開いてゆく。そのまま、中に着ているトップスのボタンを外し始めた。

「リヴァイが欲しい」
「……躊躇いもなく言いやがる。腹括った女ぐれえおっかねえもんはねえな」
左手の親指で、ミカサの唇を撫でた。ほんの少しだけ顔を傾けたかと思うと、仄かに赤い唇がリヴァイの指先に触れた。
「こわい、…?」
「そりゃそうだろ。溺れるのわかっててここに来いって、俺を海の底に引きずり込んでんだよ、お前は」
「おぼれる…?」

双つの黒い玻璃の珠が真っ直ぐにリヴァイの瞳を見つめている。

「腹立つな、お前」

冷たい口調とは真逆の手が、ボタンを外し終えると、扉を開くようにミカサの白い服を押し広げた。

「優等生。 "defloration" の意味は」

長い指がミカサの首筋をたどる。

「……花を散らせること。花をもぎ取ること。摘花」
「それだけじゃ、ねえだろ」

手が、左の乳房の上で止まる。豊かな丸みに沿って、手が布越しに覆った。内側から強くノックするような鼓動が伝わってくる。

「…………純潔を、奪うこと」
「さすがだな」

手が、レースとリボンで飾られた下着を押し上げる。

「あ、」

「もうこんなに硬くしてんのかよ」
「ン、や、」

親指の腹で胸の先を撫でられて、ミカサが唇を噛んだ。リヴァイの頭がゆっくりと降りてくると、尖ったそれを口に含んだ。ミカサの腕が慌てて蠢くが、半ば力が入らずゆらゆらと頼りなく宙を彷徨う。止まり木を見つけたようにリヴァイの両腕を掴んだ。コットンのプルオーバーを握り締めるのが精一杯らしい。
舌がゆるりと絡みついては離れてまたまとわりつく。時折口の粘膜が肌と触れ合って、ちゅく、と濡れた音がした。

「そんなにキツく唇噛むな。血が出たらどうする」
目を閉じたままミカサが顔を背けた。リヴァイの指先が唇をこじ開けてそのまま中に忍び込んだ。
「噛みてえなら俺の指にしろ」
「や、イヤ、」

張りつめた乳嘴を改めて舐られて、背筋がしなる。身体の自由が利かずもどかしい上に、胸の先がどうしていいかわからない痛痒いような心地よさに苛まれる。

「ん、んん、ヤ、りふぁい、らめ、」
「声殺すからだろ。ちゃんと、聞かせろよ。イヤなら指噛みゃ俺が怯むかもしれねえぞ」
口腔を塞いでいた人差し指と中指を引き抜くと、ミカサがはぐはぐと空気を食んだ。
「リヴァイが、ケガ、してしまう。そんなの、出来ない」

その濡れた指で、今度は右胸の乳嘴を刺激されながら唇を吸われる。

「んんんんん!」
泣きたい訳ではないのに、涙が止まらない。
「馬鹿だな、お前。自分のプライドより俺優先させんのか」
口を解放するなり呆れた声がやさしくささやいた。
「意地、悪い」
「それが、お前が選んだ男だろ」

両頬をてのひらで左右から包まれて、キスをされた。余計に涙が止まらなくなる。

「ちゃんと、感じてるとこ、見せろ。じゃねえとお前がイヤなのか怖がってんのかキモチよくなってんのか、わかんねえだろ」
「だって、もう、ヘンになりそう」
涙を舌先と唇が拭い取る。

「怖いか」
「ううん」
こめかみにキスをされる。
「痛くねえか」
「平気」
額に唇を押し当てられた。
「…無理しやがって」
「してない」
唇を、唇がかすめる。

「あ!」
一方を指で、一方を唇で愛撫される。
「無理、してねえんだよな?」

啜るような音と、舌と唇がまとわりつく感触に聴覚と触覚が押さえ込まれてしまう。

「ダメ、リヴァイ、」
「ダメ、か。イヤ、じゃねえんだな」
「!」
自分の腕が動かせるのをようやく思い出したように、自分の口元に手をあてがった。そんなことをしても息も声もこぼれて聞かれてしまう。

「お前、胸いじられただけで、イキそうだな」
「リヴァ…なに、…ダメ、それ、…それ、ダメ、」
「ああ、…………もっとか」

鼓動の感じられる左の乳房から、右の乳房に唇が移動する。舌先で肌をたどられて、息が弾むのが聞こえた。

「ミカサ。我慢しなくていい」
「リヴァイ、…どうしよう、」
「俺のこと、考えてろ」

体勢を変えて、ミカサを抱きしめると、しがみついてきた。

「ん、……やだ、リヴァイ、どうしよう、…ヘン、」

胸に顔を埋めたまま、ふるふると震えている。時々、せつなげに身体を捩らせた。乱れた呼吸が、リヴァイの耳に甘くまとわりついた。

「お前、どんだけ感じやすいんだよ」

ドロワーズのウエストに手をかけると、ゆっくりと引き下ろした。

「え。あ、……ダメ、」
「邪魔だろ、今は」
「ダメ」
「なら、精一杯抵抗するしかねえな」

ようやく顔を上げたミカサがリヴァイを見つめた。すがるような目をしている。

「からだ、うごかない、…ヤダ、」
上気した頬と、潤む瞳。小刻みにわななく唇。
「なら、いい子にしてろよ」

赤みを帯びた頬にキスをされた。

ベッドが軋み、それまで自分の近くにあったぬくもりが離れて、ミカサは体温の在り処を探した。おまけに、それまでコットンで包まれていた足に、触れるものがなくなっている。

「リヴァイ、……!」

ショーツの中に手がすべり込んできた。

「ダメ、待って、」
「少し、……気持ちよくしてやるだけだ」

淡々とした和毛に覆われた閉じたその場所が僅かに湿っているのが指先でわかる。

「リヴァイ、そんなとこ、……リヴァイの綺麗な手で、触っちゃだめ。汚れてしまう、だから、」

つぷ、と指先が切り分けるように内側にすべり込んだ。

「や、ぁ…っ、」

すぐにとろとろと溢れるものが指先はおろか付け根まで絡みついて、てのひらすらも濡らした。

「汚れてねえ、濡れただけだ。そんな言い方するな」

ゆるゆると指で蜜のぬかるみを確かめるように探る。露になった脚がその場所へのそれ以上の侵入を阻むようにより強く閉ざし合う。

「ん、ふ、……んぅ、」
手の甲で口元を押さえているだけかと思ったら、その手の甲を噛んでいるらしい。
「脚。あんまり力入れるなよ。手、挟まれたら動かせねえだろ。……そんなことしなくたって、好きなだけ可愛がってやる」
「ヤだ!」
「やだ、って、離そうとしねえのお前だろ」
ミカサの隣に横たわる。
「噛むな。ケガする。それに、……なんでそんな声我慢してんだよ」
「恥ずかしい…」
消え入りそうな声でようやく返事を返す。
「ココは、我慢したからって、黙ってねえけえどな」
「や、ダメ!」

粘膜と体液が指でこねられ、淫らな音になって部屋に融けて消えてゆく。

「リヴァイ、や、……ダメ、お願い、」
「痛えとか辛えとかじゃねえなら、聞いてやれねえな」

もっとも、これ以上先に進んだら、痛みも辛さも無視して自分のものにするに決まっている。

「イヤなのか?」
「イヤ、じゃ、…ない、て、……知ってて訊くの、ヤ、」
乱れた息の合間を無理に埋めるように、ようやくことばを発している。甘さを増した声で不満をぶつけられてリヴァイの唇がわかるかわからないかほどの弧を描いた。
「わかってんじゃねえか」
ミカサの頭を抱え込む。何よりも安心する枕を得て、ミカサがリヴァイの肩の辺りに顔を埋めた。なまあたたかい息が首筋を撫でて誘いをかけるように見えない爪痕をつけてゆく。

「んぁ、あ、…リヴァイ、……そこ、ダメ、…ダメ、や、」

刺激される内にぷくりとふくれた花芯を指の腹で丹念にさすると、ミカサが半ば泣きながら縋りついて来た。

「あんまり、目ェ閉じんな」
「だって、」
「お前にこんなことしてんのが誰なのか、ちゃんと見とけよ」
「でも、」
「そうじゃねえと、俺を思い出せねえだろ」

本当に、意地が悪い。イヤじゃないと知っているクセに。いつも誰のことを考えてるか、知っているクセに。
恥ずかしいのに、こうして触れられるのが、すごく嬉しいのも、知ってるクセに。

いじわるなのにやさしい。くちびるも、ゆびも。どうしていいかわからない。

「リヴァイ。こういうの、どう、…したら、いいの」

声がとろけそうに甘やかに濡れている。弾む呼気が部屋の空気を湿らせてゆく。

「余計なこと考えなくていい」
「リヴァイ、……あ、…やだ、……や、ダメ、……イヤ、」

抱きしめると、ミカサが力の入らない手でリヴァイの胸にしがみついた。

「いいから――イけよ」

腕の中で、ミカサの身体が何度か波打った。感触で、プルオーバーを噛んでいるらしきことがわかる。時折喉奥から嗚咽混じりの声がもれた。背中がいつもより大きく上下している。

「ン、…は、あ! は、ぁ、…………ぅ、ふ…」

濡れた指先で唇をなぞられて、ミカサの瞼がふる、と震えた。

「見な…で、」
「馬鹿言うな。俺の腕の中でイった女の顔、見てえに決まってるだろ」
「や、」
「俺にはご褒美ナシかよ」

ようやくミカサが顔を上げた。目が赤くなり、涙を溜めている。物言いたげな唇を塞ぐと、少し安心したような表情を見せた。まだ少し余韻があるのか、身体がふいに小さく波打つ。

「身体、辛いとこ、ねえか」
尋ねられると、ふるふるふる、と弱々しく首を横に振った。
「落ち着いたら、風呂入れてやる」
「いい、」
「素直に甘えとけ。まだ残ってるだろ、イロイロと」
頭を抱えている方の手で、耳の縁を撫でると、ミカサの身体が大きく跳ねた。
「リヴァイ、やだ、」
「甘えていい。好きなだけ。欲しいだけ、やる。俺は、お前のもんだろ」

少しずつ呼吸が規則正しくなってゆく。
リヴァイの腕に抱きしめられたまま、ミカサが眠りに落ちた。

溺れても、息出来るもんだな。

黒髪に顔を埋めると、リヴァイも微睡むことにした。



ミカサは洗面台の鏡を見つめた。いつもの自分なのに、別人のように感じる。何がどう違うのかは、わからない。
髪をブラシで梳く手が、まだ少し震える。自分の手ではないような感覚。
ブラウスで覆われた胸元には、キスを受けた跡がいくつか残っていた。リヴァイにしか確認することを許さない場所にある刻印が、恥ずかしい反面、嬉しかった。

「まだ先でいいんだが。泊まりで来れる日、あるか」

目覚めると日が翳り出していた。痺れるだろうに、リヴァイはずっと腕枕をしてくれていた。あたたかく、とても安心した気分で寝入ったのをぼんやり憶えている。
起きたのに気づくと、緩めていた腕を巻きつけ直して、キスをくれた。
そして、ふいに尋ねたのだ。

「と、泊まり、…?」

心臓が躍り出す。

「おう」
「いいの?」
「お前が大丈夫ならな」

一緒に過ごせる時間が、もっと長く取れる。帰るのがイヤだと思いながら支度する時間を、数時間であれ先延ばしに出来る。

「どうにかする」
「……ホントに、躊躇いがねえな。食われる覚悟、出来てんのか」
「え」
「まだ全部俺のものになってねえだろ」

ミカサが困ったように目を逸らした。

「粗末な食い方したら、もったいねえからな。時間、かけてやる」
「……!」

耳まで赤くなるのに、大して時間はかからなかった。

「なあ。アレ、ホントに一回しか言わねえのか」
「なにが」
「信じなくてもいいし忘れてもいいとかふざけたことヌカしたアレだよ」
「!」

――だいすき。

「知らない」
「言えよ。俺には聞く権利あるんじゃねえか」
「…………リヴァイなんか、キライ」

黙って抱きしめられた。小刻みに震えて、声も立てずに笑っている。

「可愛げのねえのが、お前のカワイイとこだよ」

いい匂い。あったかい。融けそうになる。



「そろそろ出るか」

バスルームのドアの向こうから声がした。
風呂に入れてもらい、身体を休めてから、帰り支度をして、今はもう日が沈みかけている。

「うん。今行く」



深い森を背にして、家路をたどる。
もう、狼のぬくもりが恋しい。ほんの少し青みを帯びた、淡いグレイの目と、掴んだら離そうとしない手。噛み付いてくる甘い牙と唇。
私を食べたいと言ってくれた、やさしくて意地悪な狼。

食べてもらったら、離れなくてすむかもしれない。繋がっていられるかも、しれない。
きもちだけでも。

私が美味しいといいのだけれど。



恋は首から下でするのだと教えられた。ことばはなく、ゆびやくちびるで。息遣いや鼓動で。
論理や知識は、何の答えもくれない。胸が痛い意味も。息が苦しい訳も。欲しくて乾くのに濡れる理由も。



ハイスクールの校舎で、同い年の稚い笑顔が行き交う中、心臓よりも深い場所が、静かに――疼く。

それは、あなただけが知っている秘密。
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