ねこへいちょう。5

「確かに、我々はお遊びの為に集っている訳ではない。どこか引き取ってくれる所を探すべきだな。……ただまあ、常に死に向かい合うことを余儀なくされている中で、いのちに目がいくのは悪い事ではないだろう。食事も正直いいとは言えないものしか出せてない中で、分け与える優しさや余裕がある事自体も、それはそれでいい事だ」
エルヴィンは落ち着いた声で言った。ハンジは膝の上の猫を撫でながら頷いた。時々リヴァイに殴られた後頭部をさする。
「引き取り手が見つかるまでは、好きにさせておいてもいいんじゃないかな。訓練の邪魔にならなければ、だけど。そこのところは、拾った彼らに責任持って面倒見させよう。ま、期限付きってことでね。なんでもかんでもアリにしたら誰も彼も好き勝手に動物を飼い始めるかもしれないし」
リヴァイは無言で紅茶を啜った。
(どいつもこいつも、……ナメたことヌカしやがって)

その日から、リヴァイには地味な面倒が増えた。

「見て見てあれ。カワイイ~」
「和むよね」
「あれか、兵長に似てる猫って」
「おー、猫兵長だ!」
さわさわと声が立ち上る。
どういう訳か猫はふらりと現れては、時折リヴァイの後ろをトコトコとついて回るようになった。
エレンとその馴染みの数名が管理することになってはいた。だが彼らにも平生の訓練や教習があり、常に猫につきっきりという訳ではない。期間限定の緊急措置の為、きっちり隔離するでもなく、教練に使用する道具などをしまう物置の一角に置いておくのだが、ひとの出入りも多い為脱走してしまうのだ。
だが、緊張と隣り合わせの殺伐とした日常に誰もが飽いていたのか、猫の存在は意外なまでに受け容れられていた。
苛立つリヴァイが振り返ると一瞬しん、と静まるのだが、猫兵長もまたその場止まって小首を傾げるのだ――あの目つきのままで、可愛らしく。そのせいで居合わせた兵士たちがほんわりとした気分になり笑みを交わす。幹部クラスの者でさえ、呆れたフリをして視線で愛でている。
リヴァイが歩く。猫も歩く。リヴァイが止まる。猫も止まる。ハンジがやれ隠し子だなんだと副官のモブリットや班員たちにネタにするので、すっかり「親子」として受け入れられてしまった。
生暖かい視線に晒されるリヴァイだけが不愉快だった。

ある時エルヴィンを待って廊下で立っていると、猫が当たり前のように足元に来た。なーん。すりすりすり。鳴いて、頬ずり。すっかり懐かれている。構ったこともないというのに。
「チッ」
エレンとミカサ、アルミンやジャンたちの顔がリヴァイの脳裏を過ぎった。猫を軽く足で追いやるのだが、離れない。
(あいつら……)

不機嫌最大限。人類最強、只今最凶。

:兵長、やっぱりおこなんですね……(戦慄)。
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