降る雨と少年少女


There is always light behind the clouds.
――雲の向こうは、いつも青空。(ルイザ・メイ・オルコット)


■アニ、アルミン、ベルトルトで。
  ミカサ、リヴァイで。
  ジャン、サシャ、コニーで。
  雨の日の小さな出来事。

■リヴァミカと、アルアニ風味とコニサシャ風味。
  コニーとサシャは可愛いなあ。微笑ましい。
  コニーは仲間思いで可愛いよね。
  あの非常時にも実は自分たちを窮地に追い込んだとまだ知らずに
  ライナー&トルトを心配しててね。泣いた泣いた。
  ちょっとだけベルアニ風味もあった。
  ジャン、愛しいよジャン。

■時間軸はお好みで(はい?)。
 アニのみ明確に訓練兵時代です。

■進撃キャラは誰も彼も愛しい。
 みんなに幸せになって欲しいけど、
 世界は残酷だからな…。

■104期生たちがわちゃわちゃしてるの好きです。
  可愛い。

■どんな時もリヴァミカだけはぶっこむのかよ、と
 自らにつっこんだぜ。ははは。

20170722→
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《雨の日のアニ》

このままずっと降ればいい。

ぼんやりと目の前を見つめていた。空から落ちてくる無数の水滴が地面を叩いている。

本来なら雨の中での立体機動訓練のはずだったが、訓練用地の近隣で土砂災害が発生してしまったため、中止になってしまった。訓練以前に被害を最小限に食い止める方が優先された。当然と言えば当然の結果だ。
訓練兵も借り出されたが、それもどうにか終わった。しばしの休憩だ。

誰かと一緒に居るのは、少し苦痛だった。
話すのが疲れる。自分の口から出ることばに、いくつ真実と呼べるものがあるのか。「自分」の無い、偽りだけで出来ているこんな人間と、話す意味などあるとは思えない。だから、ひと付き合いからは離れるのがいい。
真っ直ぐなだけの直情バカとか。そのバカにくっついてる獣みたいな女とか。その二人と仲良く出来るヤツとか。何の飾りも嘘もないような顔をしている。実際、無いのだろう。少なくとも、自分のようには。
宿舎の中に居るのが息苦しくて、外に出たのだが、それでよかったと思う。

雨の音は、嫌いではない。
心の中がざわつく時もそれをかき消してくれるような気になれる。気のせいでいい。気が紛れればそれでいい。
永遠にやまなければいい。今この時がすぐには流れ去っていかない。澱む泥水のようにだらだらとそこにある。ずっとやまないなら、それを流してくれるかもしれない。
ざわつきもかき消してくれるかもしれない。終わりにしたいものが、終わらないなら。ずっと、降ればいい。

「アニ。こんなところでどうしたの」

聞きなれた声だ。
声の主が小走りに駆けてきて、程近い場所に立った。

「……別に」
そっけない答えに、ベルトルトは微かな苦笑いを浮かべた。相変わらずだなあ。樹の下で幹を背にちょこんとしゃがみ込んでいるアニを見つめる。
「こんなところに居たら、風邪ひくかもしれないよ」
「それでもいいよ。大っぴらに訓練をサボれるからね」
「ははは。そうかもしれないね」
身体は大きいのに、控えめで、まるで自分の存在を消してしまおうとしているように思える。どこか小心でおどおどしている。……わからないでもないけれど。
ここに居る理由と、やるべきことと。それを考えたら、堂々としている方が、無理かもしれない。
私は、流されるだけだけれど。……ああ、だから、雨が降り続ければいいと思うのか。降って降って降り続けて、押し流してくれれば、……ラクになれる。
「ベルトルト。あんたはどうしてここに? 風邪、ひくんじゃないの」
「通りかかっただけ。僕は、アニみたいに華奢じゃないからね。ひかないんじゃないかな」
「ひく時はひくと思うけど」
「そうかな。……そうだね」

居場所が、ない。帰る場所は、あるけれど、帰れない。帰ったとして、……何が手に入るというんだろう。

雨の音は心地いい。かき消してくれる。誰かの足音も。誰かの足跡も。気配も。過去も未来も消してくれればどんなにいいか。

「やまないね」
ベルトルトが言った。
「何か困るの?」
「……いや」
こうして近くに居る理由になることが少し嬉しい、とも、本人には言えないけれど。
「うん、やまなくても、……いいかな」

これまでの罪と、これからの罪を、洗い流せれば。降り続く雨が、祝福や免罪なら、……いや、あり得ない。馬鹿げたことを。

「僕、行くよ。アニ、身体、冷やさないようにね」
アニは口を開くものの、何とこたえを返せばいいかわからなかった。声を待たず、ベルトルトは雨の音に紛れて行ってしまった。

ねえ。そのやさしさ、なんかの役に立つの? 私たちを許してくれる人間なんて、この壁の中には居ないんだよ。多分、……外にもね。

「アニ。こんなところでどうしたの」

びくん、と一瞬、ほんの少しアニの身体が跳ねた。出来れば聞きたくない声だった。

「別に」

バカとバカにひっついてるケモノの馴染み。夢見る瞳の持ち主。

「傘とか外套がないから、雨宿り?」
ぱしゃぱしゃと地面を軽い足取りで踏みしめて駆けてくる。
「あんた、何しに来たの」
「来ちゃダメだった?」
「別に」
「アニは、正直だね」
言われて、アニは顔を上げた。少し離れた隣に、同じようにしゃがみ込む気配を感じてまた俯く。
「イヤだなって気持ちを隠さない」
笑って言う。
「じゃあ、あんたは偽善者?」
叩きつけてみる。少し考え込んでいるような顔が見えた。
「……そうかもしれない」
唇に、笑み。アニは困ったような笑顔を浮かべるその横顔を見つめてみた。女の子のように可愛らしいクセに、目に強そうな意志が宿っているように見える。そこが、少し、……怖い気がする。真っ直ぐ過ぎる。
何もかも、見透かされるような気が、時々、する。
「何もしないより偽善でもやったら何かの役に立つこともあるかもしれないよ? …うーん、それも結局、言い訳かな」
ほら、その前向きさ。うじうじしてるように見えて、考え方や見方を変えることで、モノの在り方すら変えてしまいそうな、強さ。弱そうなフリをして、本当はとても強い。

私と違って。

体術でなら、私が確実に勝てる。でも、あんたは頭脳でそれをひっくり返してしまいそうな気がする。怖い。

「あんた、何で兵士になろうなんて思ったの」
「何もしないで居ても、何も変わらないから。僕には僕のやり方で、何か出来ることがあるんだって、思いたいから、かなあ。大事な友達と、一緒にいきたいんだ。この先も」

――怖い。未来を見ることが出来る勇気が。私にはない。過去ばかりつきまとう。戻れない時間に囚われてる。ソレが私を縛ってる。逃げるよりも流されることを選んだ、そのことを私に突きつける。

どうして、前を向いていられる? なんで夢を見られるの。

「もう行き先、決めてるんだね」
「……うん」
「死ぬかもしれないのに?」
「壁の中に居たって、いつか死ぬよ。何もしないで死ぬより、何かして死ぬ方がいいような気がする」
「怖くないの」
「怖いよ。壁の向こうから巨人が顔を出すのを見たんだ。住んでた町は戻れない場所になった。平和が永遠じゃないって突きつけられた。怖いよ、すごく」
「……そう」
ああ。あんたにも、帰れない場所がある。
「もしかして、心配してくれてるの?」

アニは初めて表情を変えた。それは横にいるアルミンにはわからない。お互いに、前を見ている。降ってくる雨を。アニは顔を動かさず、アルミンは敢えてアニを見ようとはしなかった。それが気遣いであるかのように。

「何言ってんの」
「ふふ、ごめん」

雨が小止みになった。

「アニ。ちょっと雨脚が弱まったよ。宿舎、戻らない?」
「先、行けば。私はもう少しここに居る」
「そっか。じゃあ、行くね」

来たときのように軽い足取りで去ってゆく。アニは黙って空を見上げた。

「アニ。傘の代わりになるもの、何か持ってきてあげようか?」
「! ……気にしなくていいよ。行って」

そっけなく返すと、また背中を見せて去っていった。

自分のような人間でも、虹を待っても許されるだろうか。アニは目を伏せた。濡
れた緑の絨毯に、小雨が降りしきっていた。


            ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

《雨の日のミカサ》

「やまねえなあ」
雨が降り続けている。やむまでは、と思って用具庫の入口で待っていたけれど。
訓練に使用した用具や資材は全て運び込んで整理も済んだ。もうやれることなど残っていない。訓練場とその用具庫は宿舎から少々離れているため、やむか弱まるかするまでは待とうと思っているのだが、ずっと同じ調子でだらだらと降っている。
「エレン、風邪をひいてはいけない。ので、このまま、」
「俺、やっぱ行くわ。お前はやんでから来いよ」
「あっ、エレ――」

止める間もなかった。エレンは行ってしまった。いつもそう。私がついてくるかなんて、まるで気にも留めない。ついていきたいかどうかなんて、考えも、しない。
ミカサはぼんやりと雨が降るのを眺めていた。

いつも、そう。エレンは遠くに行ってしまう。私もアルミンも置き去りにして。エレンの背中には、本当に羽根でもあるのかもしれない。ジャケットにある刺繍だけでは、満足出来ないのだろうか。

私の背中にあるのは、やはりただの刺繍でしかないのだと思い知らされる。紛い物の翼だ。
生まれながらにして翼があるものを、どうやって追いかければいいのか。

雨はまだやみそうにない。入口に立って馬鹿みたいに空を眺めている自分が、本物の馬鹿に思えてきた。用具庫の中に入ると、ミカサはふいに脚の力が抜けたかのように、へにょへにょとしゃがみこんだ。泣きたいような気分だが、涙が出てくる気配はない。
情けないというのか、惨めだと言えばいいのか。もっとも、自分にただ寄りかかるようなところがないからこそのエレンなのだし、そんなエレンだからこそ可能な限り護りたいと思っているのだが。

雨に濡れようが、どうだっていい。行くべきなのはわかっている。でも、身体が動かない。動きたいと思えない。口からは無意味なため息がこぼれた。自分ですら耳障りに聞こえる。マフラーに顔を埋めた。

翼――あのひとの背中にもある。強い私より尚強いあのひと。翼は飛ぶためにあるのに、……護るために見える。いつも真っ先に敵に向かうからだろうか。あの背中を見るのは、とても安心する。
誰よりも強くありたいと思っていた。強くなれたとも思っていた。その私よりも強いひとが居て、……どこかで安堵した気がした。認めたくなかったけれど。
あの手に。あの翼に。私たちは護られる。見返りは私たちの生きて在ることだとは、口にも出さずに。だから誰もがあの背中についてゆく。

「オイ」

呼ばれてる? そんなはずはない。

「ミカサ」

安心する声。夢を見てるのかもしれない。
雨の音がする。このまま、雨に紛れて、少しの間消えてしまえれば。何も考えずに、少し眠りたい。


「――いや、俺がついでにやっておく。下がっていい。ちょうどいい機会だ、このままこの書類に目を通させてもらう。少し貸してくれ」

ここは、どこだ。消毒薬の匂いがする。
ミカサは瞼をこじ開けるようにして前を見つめた。ぼんやり見えるあれは、…天井? そう考えた瞬間、頭痛がした。
「う、…」
すぐそばで、雨だれのような音がした。水が水面に落ちてゆく音。ああ、やっぱりまだ降ってる。続いて数滴水の滴る音がして、今度は額がひんやりと心地よい冷たさに覆われたのを感じた。
再び目を開けてみる。霞んでよく見えない。
「この馬鹿」
夢の中でまで罵倒されるのか、この声には。
「あ、の、」
「熱出たのくらい、自分でわからねえのか」
ねつ? そんなはずは、ない。少しくらくらするだけ。
「無理してこじらせたらどうする。仲間への負担を考えろ」
「リヴァ…へいちょ、問題な、…わたし、」
「黙って寝てろクソガキ」
水の滴る音がするたびに、額が涼やかで心地よくなる。どういう訳か涙が出てきた。何故涙が出るのだろう。
誰かに手を握られて、安心したのを合図に、ミカサは眠りに落ちた。


「昨日は申し訳ありませんでした」
兵士長の元に出向き、ミカサは謝罪した。まさか高熱を出して用具庫で座り込んでいたとは。おまけに意識が半ばない状態でぐったりしていたなどと。情けない。兵士の名折れと言われても仕方ない。しかもそこから兵長に運ばれて医務室で眠りこけていた。
外ではまだ雨が続いている。時折降ってはやみ、やんでは降る。
「もういいのか」
「はい。熱は下がりましたし、問題ありません」
「ならいい。無理はするな。長引くのがいちばん良くない。わかるな」
「はい」
叱られるかと思っていた。いつもそうだ。叱るというよりも、たしなめられ、反省を促され、…気遣われてしまう。
「座学以外、訓練への参加は禁止だ。今日は俺の書類整理手伝え」
「ですが、」
ぎり、と睨まれた。
「……ご指示を」
右の拳を己の左胸に当てる。
「それでいい。署名済みのヤツを、提出先別で仕分けしろ。仕分けが終わったものはそっちのテーブルの上に並べとけ」
「……はい」
気遣われている。ミカサは申し訳ない気持ちのまま、黙々と書類の仕分けを行った。

あ。
「兵長」
「なんだ」
「昨日、どうしてあんな場所に。用具庫に、何か御用でも」
「あ?」
用具庫など、その日の指導教官や担当の上役、見回りの兵士が立ち寄るくらいで、わざわざ幹部クラスの者が訓練後に訪れるというのはあまりない。そもそも、兵士長という立場にあっては、新兵風情の鍛錬や訓練などに直接的には何らの用もないはずなのだ。班編成前などは無論視察には来るのだが。だとしても、やはり用具庫には用はないだろう。
何故、自分を見つけることが出来たのか、……。

「訓練前に見た具合の悪そうなお前が、いつまで経っても戻らねえからだ」

サインする手は動いたままだ。ペンが紙の上を走る音がする。
「そうです……、!?」
自分では熱が出ているとは意識しておらず、少しの間とは言え近距離で一緒に居たエレンにも気づかれてはいなかった。訓練のさなかも誰かに指摘されたりなどしていない。

何故、気づいたの? 訓練が始まって終わるまでには、結構な時間も経過している。それは、……どういうこと?

「どうした」
「いえ、……何でもありません」
「お前、まだ熱あるんじゃねえのか」
「違います!」

顔が熱い。それがあなたのせいだと口に出して言うほど、私も馬鹿ではない。
でも、それが「なんでもない」と言い切れる強さも、ない。

護るための翼と刃。それらを背負い携えて飛んでゆく後ろ姿。
手を動かしながら、横目で盗み見てしまう。エレンではないこのひとを。家族でもなく、友達でもないこのひとを。
厭だ。こんなのは、私ではない。

身体が、熱い。



            ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

《雨の日のジャン》

「あ~~~~~~~~~~~鬱陶しい雨ですねえ。いつまで続くんでしょうか。おなか空くじゃないですかぁ!」
食堂の一角。テーブルについている二人が居る。
「いや、それ、雨と全っ然関係ねえだろ」

調整日。次の壁外調査まで少しの余裕。ジャンが食堂でのんびりしようと思ってきてみると、サシャとコニーが居た。
仲いいよな、こいつら。馬鹿同士ウマが合うのか。

適当な椅子を引いて座る。
宿舎の部屋でもいいのだが、何となくダラけるのにも飽きてきた。揃いも揃ってでろーんと伸びきった野郎の身体が累々とある部屋に居たくなかった、というのもある。

「はぁ、なんかこう、美味しいものをがっっっっっつりと! かぶりついて食べたいですー!!」
「あー、いいよなー! 肉な、肉!」
「そーおです! お肉! 鹿、鴨、うさぎ、鶉、猪、牛に豚に鶏…ああ、どれを取っても不足ナシ!! っかー、なし今は食べられんとか! 人類の為やら言うて頑張っとるんに食われんち意味ないやろーが!!」

……サシャ、本性出てんぞ。隠せ隠せ。ジャンはジョッキを借りて水を飲むことにした。
まあな。肉は食いてえよな。調査兵団入ってから食堂で食ったことねえよ。

万年資金不足の調査兵団では、食事に肉が供されることなどない。申し訳程度のパンとわずかな野菜の何か、だ。おそらく、それはこの先もだろう。今日のように時間に余裕のある時にでも、市街に繰り出して自腹を切るしかなさそうだ。
アレだ。ババアの特製オムオムでも、まあ、許してやらねえこともねえ。…あー、食いてえな。ババア、元気かよ畜生。

「山の中も随分獲物が獲れにくくなってきてはいましたけどね、それでも当たれば当たりますから! 鴨の丸焼き、…はぁぁぁぁ、天板に溜まった脂を何回も上からかけ回すと、照りが出てぱりっとなって、旨みも増して、……」
「おいサシャ、お前、ヨダレ!! きったねえから!」
「そういうコニーも出てますからね!」
「マジか!? ……マジだった!」
二人揃って必死で袖口で口の周りを拭いている。

お前ら幼児か。
…トマトのピュレっつの? あれでつくったソース卵にかけると何でああクソうまいんだろな。おーいババア、今日なら来ていいぞ。んで、ここで作れ、オムオム!!
ジャンもいつの間にか脳内レストランを開店している。

雨音が響く。お馬鹿二人の妄想は止まらない。

「鴨、アレ、脂たまんねえよな! ただ、捕まえんのが死ぬほど難しいからよ。滅多に食えねえんだよなー」
「そうなんです、囮使って、音立てないように細心の注意払って、もう必死ですよ! でも、そこまでする価値はあります!  あの脂。あの肉の旨み。煮込んでも焼いても燻製にしても、何しても美味い!! 皿に残った肉汁にパン浸して食べて、蒸かした芋からめて食べて、……あああああああああ!!」
「サシャ、やめろおおおおおおおおおおおお!!」

お前らいい加減にしろおおおおおおおお!! 現状に不満しか湧かねえだろうがああああああ!! ババア、オムオムよこせやお願いしますマジですみません今すぐ作って頂けないでしょうかお母さま!!

ジャンまでおかしくなってきている。

「はあ。あ、コニー、いつか私の村に遊びに来て下さいよ。私が獲物捕まえてきて、美味しいの、ごちそうしますから! 私はそれ以上に食べますけどね! 獲ったひとは沢山食べていいんです!」
「お、いいな! お前んとこの村、俺の村と同じ区だしなあ。行ける距離だな! 馬借りりゃ楽勝か!」

お。なんだよお前ら。いい雰囲気じゃねえか。ジャンは水を飲みつつ横目で二人を眺める。

「その前に、巨人ですよね、……怖いですよ、あんなでっかいの、……」
「そ、それ言うなよ。あの、アレだ、天才の俺とかミカサも居るしな、頭脳のアルミン居て、気合のエレン居て、うん、アイツは巨人にもなれるし、立体機動のジャン居るし、何より人類最強のリヴァイ兵長だよ! その内巨人なんて全部やれるって!」
「だといいですねえ」

コニーよ、お前は見所ある。そうだ、巨人になれるの抜けば、エレンは気合だけのクソ死に急ぎ野郎だ! ミカサ、目ェ醒ませ! そして俺は立体機動のセンス鉄板だからな!
ジャン、ひそかに調子に乗る。

雨はやまない。でも、少しささくれた日々を送る身には丁度いい。

このままやまなければ。どこにも行かず、こうしてくだらないことを言って笑っていられるなら。どんなに良かっただろう。壁もなく巨人もおらず、馬鹿みたいにただ笑っていられたら。

マルコ。なんでお前、もう居ねえんだろうな。このクッソくだらねえ話、一緒に聞いて呆れた顔してアイツら見てやりたかったよ。

ジャンは小さくため息をつく。

それでも、こうして馬鹿な仲間の馬鹿な妄想にウンザリ出来る平和くらいはある。

「おい、お前ら。いい加減にしろよ。無駄に腹減るだろうが!」
「ジャン、居たんですか!」
「食い物に気ィ取られ過ぎだお前」
「おー、ここ座れ座れー!」

雨が、窓をやさしく叩く。束の間の休息をおだやかに盛り立てていた。




雨が降ったら。
虹を待てばいい。
希望も絶望も、それぞれに持ちたいものを抱えて。

雲の向こうなら、いついかなる時も、青い空がある。
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