Mi Casa:5

現代を同窓会会場にする元壁内の人々。

■「Mi Casa(ミ・カーサ)」5話目。
  なんだかにぎやか。

■現代パロ、転生モノ。そしてリヴァミカ。

■兵長(三十路過ぎの16歳)、お掃除機能発動
 着々とご近所にもファンを増やし愛される無愛想

■ろり成分ちょっと控え目

■兵長がちょっと逢いたくて会いたくて震えかかってる気がする
  ミカサが近くて遠すぎる今日この頃


上記無問題な、もうどうにでもなれる方、どうぞ。

お読み下さっている方、ありがとうございます。
いつもの方、初見の方、少しなりとも楽しんで頂けますように。
===============

思ったより盛況だ。毎日のように何かしら依頼を貰える。

リヴァイは居並ぶ商品をチェックし、必要なものをカートに入れてゆく。
一見不機嫌そうにしか見えないティーンエイジャーの小柄な少年が、清掃用品のコーナーをじっくりと練り歩いていた。広々としたDIYストアの一角は、彼にはちょっとした宝の山だ。

この店、品揃えいいな。

リヴァイは誰にも判らないレベルで目を輝かせていた。基本彼の目が明瞭に輝いて見えるのは、怒りと戦意を露にした時だ。昏い輝きのせいで、見る者を怯ませる。今は珍しく喜びのせいだった。
ラバー製手袋、雑巾、ブラシ大中小、箒、はたき。洗剤は多用途使用可能なものを選んだ。重曹とクエン酸もあった方がいい。
この世界のクソじゃねえところは、掃除をする為の方法の多様性があるのと、ツールやアイテムの種類の多いことだな。
「あら、リヴァイ! お買物? また仕事入っちゃったの?」
アッカーマン家の近所に住む女性だった。
「はい、ありがたいことに」
「うちもまたお願いしたいわ」
「是非」

「この家の掃除、俺もやってもいいですか。おばさんが忙しい時なんかに」
アッカーマン夫人に尋ねた時、彼女は戸惑った顔をしていた。
「リヴァイ。いいのよ。ミクの相手をしてくれてるだけで、私たちは十分嬉しいしありがたいわ」
どうやら「居候」故に気にしているのだと思われているらしい。夫妻共に鷹揚で寛容が過ぎる。
「いえ、趣味を兼ねた特技です。結果を見て、最終的な許可を貰えれば」
「そう? じゃあ、お願いしちゃっていい?」
「ありがとうございます」

アッカーマン夫人は勤勉だ。家事も丁寧で掃除もきちんとしているし、何より清潔さを好むらしきことが伺える。日本人は綺麗好きが多いというから、日系の彼女もそういう傾向があるのかもしれない。
しかし。手の届いていない部分もきっとあるに違いない。何より、完璧というものはそう簡単には手に入らない。
キッチンはオーブンと作りつけのガステーブル、収納棚の奥。洗面所とバスルームも併せて重点的にチェックすべきだ。水周りは油断出来ない。
エプロン姿のリヴァイは、埃よけにバンダナで頭を覆い、マスクで鼻と口を覆う。ゴム手袋をはめると「戦場」に向かった。

「すごい。リヴァイ、窓が! ガラスが入ってないみたい…」
プレスクールに娘のミシェルことミカサを迎えに行って戻ってきた彼女は、開口一番そう言った。
掃除を終えたリヴァイは自分で淹れた紅茶を啜っていた。
「ありがとうございます。十分綺麗でしたが、細かいところや気になったところをやらせてもらいました」
迷惑にならない程度にモノの整理整頓もやってみたのだが、問題なかったらしい。
「どうやったら窓ガラスのキワ、こんなに綺麗になるのかしら……」
アッカーマン夫人は目を輝かせている。
その仕上がりの素晴らしさを、友人知人に自慢げに話した。うちに来たリヴァイはとてもいい子で、お掃除がうまいの、プロを呼ぶ必要ないわ! とそれはそれは楽しそうに。
友人のひとりが自分の家のガレージも頼めないかと言ってきた。当然報酬も支払うと付け加えた。
結果を見たその女性は、リヴァイが提示した金額では安すぎると言って、三倍もの金を封筒に入れてくれた。
口コミは瞬く間に広まった。
富裕層も多く、リヴァイが働く理由を知って、報酬をはずんでくれるひとが多い。アッカーマン氏が信用のある人物なのも影響しているのだろう。事業所や小さな店からもちょくちょく連絡が来る。
アッカーマン夫妻はせめてプレゼントさせてくれと、スマートフォンをリヴァイに手渡した。何かあれば連絡が取り合えるし、仕事をしてほしいひとたちとの連絡も簡単になるからと言って。

「リヴァイ。お金のこと、気にしてる?」
アッカーマン夫人は少しさびしそうに尋ねてくる。
「せめて何パーセントかでも払わせて欲しいだけです」
……自分の学費だしな。

リヴァイは高校に通っていない。以前住んでいた場所で通っていた学校からドロップアウトしている。売られたケンカを買うでもなく買った結果、相手の方が自業自得でひどいケガを負ったのを必要以上に責められた。またそれに対しては事実を伝えるのみで特段抗議もしていない。
アッカーマン夫妻は、復学出来るように手続きも可能だと言ってくれたが、何となくその気になれなかった。
リヴァイの意志を尊重した夫妻は、ホーム・スクールを提案してくれた。より自分のペースで進められるし楽しめるのではないかと言って、教師を探すとまで言ってくれている。

大勢の人間に囲まれる生活。強さのせいで遠巻きにされていたし、自分も好んでは近づかなかった。
――みんな、自分より先に死んでゆく。自分の元を去ってゆく。
恨み言を言う間もなく、頭を食い千切られ、四肢を噛み切られ、丸呑みにされていった。断末魔すら上げられずに巨大な胃袋におさまってゆく。
極端な場合は化け物扱いだった。ひとより速く飛べて、ひとよりうまく肉が削げる。粗暴な態度とことば遣い、必要ならば恫喝もする。避けられる理由は十分だった。
それで、良かったとも思う。仲間の屍の上に成り立つ自分のそばには、居ない方がいい。
ただ、例外は居た。自分を兵長と慕い、叱られても殴られても平気な顔でついてくる連中が。自分のような人間だからついていくのだと言ってのける、どうしようもないのが。
反発し、燃えるような目で自分を睨んでいたくせに、後に常に後ろを護り共に戦うと言った、唯一無二の存在が。

リヴァイは買い込んだ商品を手に、店を出て駐輪場に向かった。サイクロクロスバイクを停めてある。出張掃除の報酬でもらった中古品だが、状態もよく日々活用していた。

「兵長」

聞き覚えのある声がした。リヴァイは振り返るのを躊躇った。振り返る資格があるのか、わからない。

「リヴァイ兵長ですよね」

自分を呼ぶ声が震えていた。確かめようとするのは、諦めなのか希望なのか。

「兵長。お久しぶりです」

そのきん色の髪を憶えている。最後に見た時は自身の流した血で赤く染まっていた。虚ろな瞳が天を仰いでいた。

「……ペトラ」

そう呼ばれた女性は、涙を流しながら微笑んで右の拳を自分の左胸に当てた。


「兵長!!」
ペトラが猛ダッシュで駆け寄ってきた。何人かの通行人が驚いて顔を見合わせる。
「兵長! 会いたかったです!!」
リヴァイはかわすことも出来ないままにペトラに抱きつかれた。
「会いたかったです、ずっと、ホントに、……本当に、本当に、会いたかった、ずっと会いたかったです! すみませんでした、すみませんでした、すみませんでした、兵長に何もかも背負わせて私たち――」

クソッ。またか。何でお前らは俺なんかに謝る。

「ペトラ。謝る必要はない」
リヴァイがそう言うと、ペトラはしゃくりあげ、リヴァイにしがみつくようにして身も世もなく泣き出した。
お前たちをむざむざ死なせたのは、俺だ。俺が命令して、だからお前たちは従った。必要なことだった。でも何でもないことだとは思っていない。当たり前のことだとも思わない。
そして、引きずって感傷に浸ることをしているひまもなければするつもりもなかった。ただ消すこともなく抱えてゆく。
リヴァイの手がペトラの肩を軽くさすった。ペトラは必死になって顔を手の甲で拭い、ようやく顔を上げた。
「……兵長、みんなを呼びます! 待ってもらえますか?」
「お前、みんなって、」
皆まで言わせず、ペトラは肩にかけていたバッグから、スマートフォンを取り出した。画面をものすごい形相で操作し、電話をかけ始める。
「――オルオ? すぐにグンタに電話して。緊急なの。私はエルドに連絡する。…うるさい! そんなのどうでもいいの。違う! 兵長! リヴァイ兵長に会ったの!! そう! だから今すぐ合流して! すぐ支度するの! 繋がるまで電話して! 講義なんかどうだっていい!!」 
電話の向こうでも何やら叫んでいるらしい。
「兵長。待ってて下さい。今みんな来ます!」
目の周りを真っ赤にしたペトラが早口でまくし立てた。

どのツラ下げてあいつらに会えばいい。


ペトラの電話から、十五分ほど経過した頃だった。急いでいるのがわかる少々荒っぽい運転で、一台のSUVがこちらに向かってくる。深みのある緑のボディが記憶をくすぐる。
壁外に出る時必ず身につけていた、「自由の翼」を背負うマント。
駐車場の空きがなかなかいい場所に見つからないらしく、車はドリフトしそうな勢いで空いているスペースに突っ込んでゆく。運転席、助手席、後部座席の窓から振り回された腕や乗り出した上体が見えた。止まるなり勢いよくドアが開いた。

「あれ見ろ! 信じらんねえ!!」
「すげえ、おい、エルド、ホントだ、マジだった!!」
「兵長だ! あれマジで兵長だぞ!! 変わってねえ! 変わってねえよ!」

口々に叫ぶ声。壊れそうなまでの激しいドアの閉まる音三回。大柄なダーク・ヘアの男、金髪の男、彼らに比べれば少し痩身の男。全力疾走でこちらに向かって駆けてくる。
見覚えがあるどころか、忘れたこともない。

「兵長!!」
三人が子供のように叫んだ。揃いも揃って泣き笑いの表情を浮かべている。

……勘弁しろよ。リヴァイは奥歯を噛む。

「リヴァイ兵長!!」
大の男三人に囲まれ、リヴァイは動けなくなった。頭の上から嗚咽混じりの声が降ってくる。一番派手に泣いているのはオルオだろう。その様子を見ながら、ペトラも改めて泣き出した。エルドが気づき、ペトラを招くとリヴァイを抱きしめる輪に加わった。

ああ、やっぱりチビってのはロクなもんじゃねえな。野郎どもに抱きつかれたまま動けやしねえ。

DIYストアの駐車場で泣き喚く一団は、人々の目に奇妙に映った。当事者たちは誰一人そんなものを気にしていなかった。
円陣の真ん中で潰されかけている少年だけは、静かに遠い日々を思い出していた。


「へいちょ~~~~~」
「おいエルド、いい加減にしろ」
エルドは思い出したようにリヴァイの肩に腕を回して抱きついてはツーブロックヘアの頭に額をぐりぐりと擦りつけてくる。もう何度目なんだよお前は。酔ってんのか。
「旧リヴァイ班」だった面々とリヴァイ、そしてリヴァイの自転車は、エルドのSUVに乗り込み移動した。郊外のだだっ広い公園なら多少騒いでも妙な単語が飛び交っても問題ない。途中飲食物まで買い込み、到着すると大きな樹の下に陣取った。
「そうだ、エルド、お前だけズルイ!」
「オルオ、ソコじゃねえ」
「あ、じゃあ俺も」
「グンタ、テメェもか」
グンタもエルドと同じようにリヴァイに腕を回して抱きついてゆく。
「兵長、私もやりたいです!」
「ペトラ、お前だけはマトモだと思ってた俺の信頼裏切るんじゃねえよ」
「だって、やっと会えた兵長が私たちより年下、ぴっちぴちの可愛い十六歳ですよ!? ご褒美じゃないですか! ぎゅーってしたりほっぺたすりすりしたいです! そもそも兵長、お肌キレイですよね、前からそうでしたけど、あの頃もう三十歳過ぎてたのにスベッスベでしたよね、今もっとスベッスベですよね、何なんですか、もう!」
「……お前、気持ち悪いな」
オルオはすねたようにカフェのショッパーをごそごそとかき回し、中から買ったものを取り出し始めた。
「兵長、やっぱり今も紅茶好きなんですね」
「まあな」
オルオが手渡したカップを手に取る。ペトラも配り始めた。全員が手に飲み物のカップを持つと、各々額の前に掲げて乾杯した。
エルドとグンタは大学四年生、オルオとペトラは一年生なのだと言った。大学の進学でエルドとグンタが再会し、ペトラとオルオは幼少からの腐れ縁で、進学先に年長ふたりが在籍していたとのことだった。
「……元気そうで、何よりだ」
リヴァイがつぶやく。
「兵長も」
「……ああ」
車座になって座っている全員の顔をゆっくりと見回した。あの頃と変わらず、自分を見つめる目がある。

「すまなかった」

リヴァイはぽつりと言った。またオルオが涙ぐみ始めた。
「いや、兵長、謝らないで下さい。それは俺たちの台詞です。女型にああもあっさりやられちまって」
エルドとグンタは年長故により気にしていたらしい。エルドが吐き出すように言うと、ペトラも表情を曇らせた。
「よくやってくれた。お前らの尽力もあって、あの後も調査兵団は成立していた。エレンも無事だった。謝ることはねえんだ。俺はただの一度もお前らを恥じたことはねえよ」
「情けねえ。俺、兵長に全部押し付けて死んじまった」
オルオはずっと泣いている。
「馬鹿野郎、そうじゃねえ、オルオ。俺やエルヴィンはお前ら全員に恨まれても仕方のねえことしたんだ。そんな風に考えるな。部下を率いる役ってのは、責任取る為に居るんだ。成功すりゃお前らの命がけの奮闘のおかげだが、失敗すりゃ俺たち上役がクソってだけだ」
「言ったはずです、兵長。俺たちは、……そんな風に何でも背負っちまうのが心配だ、って」
グンタが言った。


壁外調査への出発が迫っていた。エレンは既に地下の部屋に戻らせ、睡眠をとらせている。旧調査兵団本部の食堂にはリヴァイと四人だけが集い、持ち込んだ酒を酌み交わしていた。
「兵長。怒らないで聞いて下さい」
「何だ、怒らせるようなこと言うつもりか」
「そうかもしれません」
エルドが苦笑いする。
「俺は、……俺たちは、死ぬつもりはありません。生きて帰るつもりです。今までもそうだったし、これからもそうありたいと思ってます」
「……」
「ですが、……もしです。もし、万が一、俺たちが死ぬようなことがあったら、」
エルドがことばを切ると、蝋燭の燃える音が耳についた。
「……俺たちのことを、忘れないでほしいです」
誰の目にも、リヴァイの顔がそれまで以上に暗く映る。
「兵長は、おっかないですけどね、俺たちは全員知ってます。ほんとは優しいし、部下である俺たちのことを使い捨ての道具みたいには扱わない。誰が死んでも当たり前なんて思ったりしない」
そこでひと口酒を含む。
「俺たちは、この特別作戦班に、兵長の名前を冠して呼ばれるリヴァイ班に、選んでもらったことを、本当に光栄に思ってます。これ以上の名誉はないです。俺たちの実力と実績で選んだと言ってもらえて、心底喜びました。今でも夢みたいだと思うくらいです」
また、ひと口。
「忘れないでほしいなんて言わなくたって、兵長は俺たちを憶えててくれるって、わかってます。ただ、きっと、……きっと、兵長は全部背負ってしまう。自分の責任だと思ってしまう。そんなもんに潰される兵長じゃないのはわかってます、でも、抱えてほしくない。――俺たちを憶えててほしいです。でも、死んだりしたら、その時のことは、諸々忘れて下さい」

リヴァイはエルドの顔を見つめている。それから、今この場に居る全員を。

「兵長は俺たちの誇りです。俺たちを選んだことで、後悔して欲しくない。だから、直々の指名に喜んで拝命した時や、任務の時以外の間抜けなツラだけ、憶えててやって下さい。誰よりも強くて、どんなことがあっても前見て進んでく兵長についていけるのは、兵士として本望だと思ってます。俺たちは、全員兵長のことを心から尊敬しています。従うことに、何の後悔もないです」
四人とも真っ直ぐに自分たちの上司に崇敬の目を向けていた。リヴァイは琥珀色の液体を飲み下した。
「……生きて帰る。いいな」
「はい」
蝋燭がひときわ大きく燃えた。


「……お前ら、……今、幸せか」
「兵長に会えたんですよ? 幸せに決まってます!」
ペトラが大きな瞳に涙を浮かべて笑いながらはっきりと言い切った。
「今訊いたのはそういうんじゃねえだろ。てか、そんな安い幸せでいいのかよ」
「もう死んでもいいくらい幸せですよ、兵長!」
「今度はうんざりするくれえ長生きしろ、馬鹿」
リヴァイに頭をぐしゃりと押されて、オルオは目元を何度も擦っていた。

カシャ。

ふいに乾いた音がした。
「再会の記念ですよ!」
エルドがスマートフォンを持って写真を撮っている。
「わっ、私も! 兵長、一緒に撮って下さい!」
「俺も撮る! おい、オルオ、泣いてないで撮るぞ!」
「お、おう」
オルオもようやく涙を引っ込めることが出来たらしい。慌ててジーンズのポケットを探っている。
「兵長、さすがにこの時代ですから、スマホとか、持ってますよね? アドレス交換しましょう!」
ペトラが楽しそうに言った。
「……若ぇな、お前ら」
呆れたようにつぶやくリヴァイを見て、旧リヴァイ班は声を揃えて笑った。
「今一番若いの、兵長ですよ!」
「あーもう、こーんな可愛いカオして、ほっせえのにすんげえ胸板! うわ、腹にムダ肉がねえ! 硬え!」
「うん、相変わらず引き締まってますよね、兵長。着やせするのも変わってないですし」
「野郎が身体まさぐるんじゃねえよ、気持ち悪い」
「私ならいいってことですね!」
「ペトラ、恥じらいを前世に棄ててきやがったのか」
「兵長、俺まだ触ってま」
ガッ!!
「オルオ、そこで噛むのかよ……」

カシャリカシャリとシャッター音がテンポ良く響く。

「どんだけ撮るんだ……」
入れ替わり立ち代わり撮り続けている。
「スマホのメモリなくなるまでです!」
誰もが笑っていた。
「しょうがねえな」
「!!」
はしゃいでいた四人が驚いた顔をして動きを止めた。
「兵長! 今の、今のもう一回お願いします!」
「あ?」
「今、かすかにですけど、笑いましたよね! え、嘘、私初めて見たかも!」
「すげえ、俺も初めて見た! 兵長、もっかいイケます?」
「貴重すぎる! お願いします!」
ぎゃあぎゃあと好き放題に騒ぐエルド、グンタ、オルオ、ペトラ。

生まれ変わった甲斐ってもんが、あったらしい。リヴァイは少し目を細めて、年上になった元部下たちの笑顔を眺めていた。


「リヴァイ。お手紙よ!」
ミカサが大振りの封筒を手にリヴァイの元にやってきた。
「お友達? 中身なあに?」
「何だろな。重てえ」
興味津々で黒い瞳が覗き込んでくる。
封筒は「四人」の連名だった。リヴァイは刃物を使うからと念のためミカサから離れた場所に移動して鋏を用意し、封を切った。中には、通常サイズと大判に引き伸ばしたもの、様々な写真がどっさりと入れられていた。
「この間のか。……いや、散々ひとのスマホにクソいっぱい画像送信してきただろ」
写真のほかに、グリーティング・カードも入っていた。デザインにしてもペトラの気遣いとわかる。

「私たちの兵長へ
先日撮った写真です。スマホに送った分、消してもいいように送ります。飾って下さい!
あと、私たち五人だけがアクセス出来るシークレットSNSのアドレスも記しておきます。
チャットも出来ますから、楽しみにしてます。
必ずログインして下さいね! 沢山画像載せました。
兵長に会えなかった間の写真もいっぱいです。
また会いましょう!
愛を込めてXOXO ペトラ、エルド、グンタ、オルオ」

最後の署名だけは、それぞれがインクの色まで変えて記入したらしい。

「リーヴァーイ! なあに、コレ! すっごいいっぱい! いつの間にこんなにお友達出来たの? この美人のお姉さん、誰? ミク知らない! 『あいをこめてキスハグキスハグ』ぅ!? うわきは、ダメ、絶対!」
「お前、色々とひでぇな……つか、キスハグもう見てわかんのか、…怖えよ…」
一番大きく引き伸ばした写真は、中央のリヴァイに四人が抱きついたものだった。エルドが撮ったセルフィの一枚だ。少し呆れたカオをした自分の周りに、これ以上ないくらい楽しそうな笑顔が咲いている。
「なあに? リヴァイ、泣いてるの?」
写真に見入っていたリヴァイに、ミカサが声をかける。
「このツラ、泣いてるように見えんのか」
相変わらずの仏頂面で、リヴァイはいぶかしげに少女を見る。
「んー。リヴァイはね、涙ぽろぽろ流すのと、違う泣き方するでしょ。わーん、って泣けないから。そうやって黙って誰にもわからない方法で泣くの。ミクにはわかるよ」


ああ、クソ。ミカサ。今すぐ抱きてえ。
お前、……どこだ。



「あなたは、そうやって泣く。誰も気づかないだけ。気づかれないだけ」
「……泣いてるのはお前じゃねえか」
「魚みたい。水の中で泣いて、誰もわからな――」
抱きしめるのは、腹が立つからか。
なら、腹が立つのは、……何故だ。



「お前には勝てねえな」
「お姫様はね、王子様を護るものよ! 泣きたい時には泣かせてあげるの」
「イマドキのお姫様万歳だな……」
「リヴァイ、お部屋に写真飾ったら? ミク手伝ってあげる!」
「……おう」


アッカーマン氏の許可をもらい、ノートパソコンを借りた。ベッドの上で起動させ、言われていた通りの手順をこなすと、スマートフォンへの連絡通りSNSへのログインを示すアイコンが出ていた。
アクセスすると、ページのトップに白い翼をデフォルメした絵をバックに「Team Levi's HQ(リヴァイ班本部)」とある。

……もう忘れろよ、ソレ。リヴァイは小さくため息をついた。

メンバーそれぞれのページがあり、それぞれが思い思いに画像を載せていた。リヴァイと出会った時に撮ったものに加えて、ペトラと一緒に笑うオルオ、小学生と思しきエルド、キンダーガーデン時代のグンタ、プロムのドレス姿のペトラ。
自分たちがいかに今幸せなのかを伝えるために。
チャット画面が立ち上がり、次々とログインを示す音が鳴った。リヴァイがログインすると画面がどんどん更新されてゆく。どれもリヴァイの参加を喜んでいた。
「おっさんをネットに引きずり込みやがって」
童顔のビタースウィートな十六歳は苦々しくつぶやいた。

「リヴァイ! えっちなの見ちゃダメだからね!」
「……この家の五歳児はどうなってんだ……」
「あ、それとね、ママが呼んでるんだけど」
「わかった、今行く」

リヴァイはカタカタと手早く打ち込むと立ち上がった。
部屋を出ようとして、ふと壁を見つめる。ミカサと一緒に貼った写真に、かつての仲間の笑顔。
「リヴァイ?」
「急かすなよ、お姫様」

チャットには、リヴァイの打った、夫人に呼ばれた旨と落ちることへの謝罪の文が表示された。
最後にはこう書いてある。


Levi : You guys, thanx. (お前ら、ありがとう)
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