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文書室にて

璃果

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4月24日は我らがモブリット・バーナーの誕生日でした。

ので、お祝い的なナニカを書こうと思ったんだけど、結果として私がモブリット恋しくて何やら湿っぽいハナシがひとつ生まれただけでした。ついったに上げたものをこちらに加筆修正して掲載しときます。ありがたいツッコミを頂いたところも直してみた!
相変わらず今日中にあげるぞーみたいな散歩行きわんこみたいな馬鹿テンションだったので誤字脱字が酷かった…。

タイトルもまだ「(仮)」ついたままだけど、多分このままになるのかな(トップ画像には「仮」の文字入れなかった。もしまるっと訂正なら画像も作り直すぜ)。最初は「文書課の女」ということばばかり頭を過ぎったんだけど、そのタイトルつけるとまるでモブリットと何かあったみたいにとられそうだなあ、ヘンな三文ぽるのみたいだなあ、と思ったのでやめました…。
文中から何となく若い女性だとわかってもらえればいっかな、と思ったのもあったし。

イロイロと捏造して、モブリットを偲ぶおはなしになりました。

それと、兵団の目立たない役目を黙々とこなしているひとたちもきっと居るよね(そりゃそうだろ)、とか色々浮かんだものを投入して。どうなってるんだろう、兵団組織内部構成は(瑣末なことが気になる気になる)。

語り手はちょっとニファちゃんみたいなコを思い浮かべてました。若いけれどきびきびとよく働いて、変わり者の上司をそれでも慕ってる、みたいなカンジの女性。
呼びかけがブレる(ハンジさん/団長、とか)のは、ひととして慕う気持ちと兵士として敬意を示さなくてはという気持ちが入り混じるから、ということでご理解下さいませ。

りばみか要素は砂粒ほどもありません。

モブハン書きたかったけど私にはまだムリだった(ちょこっと書いたのはあるけど、りばみか小説の中の一部くらいだし。まだ公開してないヤツ)。

もしよろしければどうぞ。

モブリット、あなたの居ない世界はサビシイし物足りない。
お誕生日おめでとう。そして安らかなねむりを。

20180424

※20180505 「文書課にて」というタイトルから「文書室にて」に変更。一応これで決定ということにしようかな…。また変わっていたらすみません。



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 文書室に入ったのは必然だったのか偶然だったのか。私にはよくわからない。配属されたと言うのか、希望したと言うのか。その辺りも今になってみれば何だかあやふやなものだ。どちらも正しいし、どちらも何だか少しずれている。
 兵団はただ壁を補修したり武器の手入れをしたり一般人を取り締まったり壁外に出ている訳ではない。組織というものは当たり前のことではあるけれど、手続き、というものが発生する。上から下、下から上、報告、相談、連絡。行き違いがあってはならない。あるひとには「決定」と伝わり、違うひとには「検討中」と伝わるようでは意味がない。ひとつの事柄は同じく等しく伝わらなくては組織に混乱が生じてしまう。
 よって、文書によってやり取りする。各部署の責任ある立場の人間が署名し、それによって読んだ事実を記録すると同時に、同時に同意する旨を表明する。
 よくもまあこんな瑣末なものまで、と、よく知らないひとは言うのかもしれない。瑣末だからこそ存在している、とも言えるのだ。瑣末なものならば、忘れ去ってしまうではないか。
 転属願、転属願受付票、履歴書、履歴抹消承諾書、会議議事録破棄控、退団願、休暇願、……紙、紙、紙だ。
 でも、私はそんな「兵団の瑣末なあれこれ」がきちんとまとめられて棚に並んで収まっているのを見るのが、嫌いではない。ひとの歩みの記録の一部なのだ。
 人類は決してひるまず進む、進みたい、進んでいるのだ、と、そう宣言しているように感じる。

 私がもう壁外に出ることはないからかもしれないけれど。

 ただ、少し悲しくなることも、ある。たとえば、これ。いかなる記録も大切だと思う。けれど、その中でも一際大切だと思うもの。
 手に取ったものの、すぐには開けず机に置いた。

「やあ。こんにちは」

 ハ、ハンジ分隊ちょ、…失礼しました! ハンジ団長、こんにちは! あの、いえ、

「ああ、気にしなくていいよ。私だってそんな呼ばれ方しっくり来てないんだからさ」

 やっぱり団長って言ったらエルヴィンだよねえ、と笑った。ハンジさんは、ちょっと、その、……とても変わっている。でも、悪いひとではない。まあ、はた迷惑ではあるのだけれど。

 どういったご用件でしょうか。

「うん。書類、もらおうかと思ってさ」

 どなたか部下の方に、そこまで言って私は黙った。何てことを。ウォール・マリア最終奪還作戦で、私たちはほとんどの仲間を失ったというのに。まだ新たな調査兵団の部隊編成も終わっていないのだ。新兵や他兵団からの転属者の配置も、これからだ。

 す、すみません。どの書類でしょうか。

「ああ、うん、」

 日々発生するいかなる事例にも対応出来るように、書式を定めて量産してある。ものによっては「長」のつく立場の兵士はある程度手元に予備も含めて保管していることも多い。
 上申書や報告書ならば皆手書きするしかない。でも、日々飛び交う書類の大抵は必要な部分を埋めるだけのものだ。

「亡くなった兵士の家族に手渡すヤツ」

 私は凍りついた。いつものことだけれど、暗澹たる気分になる。壁外調査で死んだ兵士の家族の元には、必ず立場のある人間が書類を携えて訪問し、正式な報告と通達を兼ねて弔辞を述べるのだ。出来得る限りその兵士の身の回りのものを携えて。大抵はどの兵士もそれほど多くは所持していない。最低限必要なものしか持てないのだ。官給品の衣服兵服、僅かな私物。書籍だったり愛用のグラスだったりなんでもないものが多い。その「なんでもない」ものこそが大切だろうと思う。
 分隊長や班長、亡くなった兵士の実績や経歴によっては団長クラスのひとが直接赴くことだってある、と聞いている。かなり階級が上の方であっても、個人的な関係性から買って出る場合もあるらしい。やるざるを得ない、だけかもしれないけれど。
 詳しくはわからない。誰も多くは語らない。

 指定された兵士の名を入れて文書を作成し、要請したひとや部署に届けることになっている。大抵は、…死没者名簿が届けられて、課の面々で手分けして作成する。分隊長や班長が存命ならばその責任者本人が申請し、亡くなっていれば代わりの者が。
 エルヴィン団長すらも亡くなって、今この調査兵団でそんな立場にあるのはもう次代…現団長のハンジさんと、リヴァイ兵士長くらいになってしまった。リヴァイ兵士長も署名や書類仕事に忙殺されていると聞いている。いかなる時でも不機嫌そうで、少し冷徹に見えなくも無い。けれど、そんなふうに見えて、部下や仲間をとても大切にしている方だと言う。そういうことも、ハンジさんが教えてくれた。ましてや、部下どころかエルヴィン団長が、……。リヴァイ兵士長は不思議な方だ。上役である団長にも平気で私たち部下に話しかけるのと同じ口調だし、それでいて逆らうこともなく支持された任務や命令は黙々とこなしていらした。兵長なりの敬意の払い方、というものがあるのかもしれない。

 では、こちらに亡くなった兵士の名前や階級をご記入頂いて、

「私が欲しいのは、その書類の見本なんだ。印刷がズレたりして使えないヤツとか、ないかな。それでいいんだけど」

 ひょっとして、…全て手書きで? ハンジさん、…団長は「まあね」とだけ言った。表情はとても穏やかに見えた。巨人の研究に没頭して睡眠時間すら返上している時のぼんやりした表情でもなければ、壁外調査前のどこか溌溂とした表情とも違う。
 事務室の奥から取り出してきた書式見本を手渡した。

「ありがとう」

 団長は書類にまじまじと見入っていた。まるで初めて目を通す書類のように。そして、思い出したように顔を上げた。

「ねえ」

 なんでしょうか。

「元気そうで良かったよ。もう足は痛まないの?」

 はい、…もう、何ともありません。
 私は消えてなくなることのないひきつれのことは無視した。巨人からの攻撃を避けようとして落馬し、ワイヤーの射出も間に合わず慌てふためいてしまった。奇行種まで出現したせいで隊列の散開がうまくいかず、狼狽した馬の蹄で腿が大きく裂けた時はもう死ぬかもしれないと思った。それを、副長が、

 副長が、…モブリットさんが、私を、……だから私は置いていかれることもなく生きてこうして、

「ハンジさん。もしかして、それ、それは、」

 またね。そう言って去っていった。

 手元の書類に目を落とした。手渡したものと同じものだ。

《この度の壁外調査にて勇敢に戦い、我々人類の未来と繁栄の礎となり、その心臓を捧げるを以て尊い英霊となられたことを、国並びに兵団は心より悼み、冥福を祈念するものである。》

 兵士の本籍を確認し、所属や階級を確認し、間違いのないように整える。階級が上の人々を巡り行き交い、署名をもらい、ようやく遺族に手渡せるものに仕上がる。

 ハンジさん。ハンジさんは、ハンジさんの名前で、それを書いてお渡ししたいんですね。とても、……とても辛いのに。

「分隊長! 風呂くらい入って下さい! あんたもう何日目ですか! またリヴァイ兵長に蹴り倒されますよ! 巨人に会いたければまず兵長に殺されないようにして下さい!」

 不思議だ。悲しいのに何故か笑ってしまった。副長はとてもいい方だった。優しくて、勇敢な方だった。ハンジさんが何をしても何をやらかしても、困った顔で、怒った顔で、追いかけて支えていらした。影のように。日向のように。私達班の兵士たちにもおおらかに、時に厳しく接して下さった。

 もう、会えないなんて。

 さっき机の上に置いたままにした「英霊名鑑」を手に取った。今までに壁外に出て生きて還れなかった沢山の仲間たちの名前が記載されている。壁外調査が完了する度に足されて増えてゆく名前。名簿の厚みと重さは命のそれが増していくようで、辛い。私も、もしかしたらあの時ここに載っていたかもしれないのだ。

 モブリットさん。ハンジさんを、守って下さい。私たちの大切な分隊長を。



 思い出すのは、あの控え目な笑顔。
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Posted by璃果

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