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地図を往く雲

璃果

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ミカサさんがただひたすらクダをまいてるだけの短編です。りばみかっぽいナニカ。

もとい。ミカサのモノローグだけで成立するみじかいおはなし(?)。

いちゃいちゃは皆無。兵長との絡みはほんの一瞬だけ。

常に自分の前に、上に在る、目障りな存在のせいで、ひとり苛立つミカサさん。

惹かれていることを認めたくなくてちょっともがいてるミカサ。思わず笑みがこぼれた理由が自分でもわからない。でも、悪い気分ではない。

新居昭乃ちゃんの「地図をゆく雲」からタイトル頂きました。恋人が(多分外国に)旅立つのをさびしく思いながらも追いかけてゆくのだと決意する女性の心情を歌った曲。

ほぼほぼ撮って出しならぬ書いて出しなので、後で訂正や加筆修正があるかもしれません。縦書きのページメーカーでつくってついったにあげようかと思ったのですが、とりあえずぶろぐにひっそりと。

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 どうして出逢ってしまったのか、と、時々思う。出逢わなければ良かった、と、時々思う。

 マフラーを巻いてくれた小さな手はとても温かかった。私を命がけで助けてくれた手。真っ直ぐな目。世界が美しいのは、このひとが導いてくれたからだと思った。
 強くなりたいと願った。そうすれば世界は美しいままでいられるのだと思った。どんな酷い事も厭な事も、在ったままで抱きしめられると思った。

 強く、強く、誰よりも強く。

 私は強くなった。護りたいものは何もかもこの手で護れると思った。

 そうじゃなかった。そんなのはただの願望であって、現実ではなかった。私には出来る、何でも、何度でも出来る、そう思っていたのに。

 どうして出逢ってしまったのか。

 死ぬのは怖くなかった。一度死んだ身で、私はそれが間違いだと教えられて、掬い上げられてこの世界に戻った。
 死んだら大切な思い出も手放すのだと思えば、死ぬ訳にはいかないし、死ぬはずもないとすら思った。

 「帰ろう」と言ってくれた。私たちの家だと言ってくれた。寒くて凍えそうな私に、自分のマフラーを巻いてくれた。
 その温かさを二度と失いたくない。

 なのに、怖い。
 怖い。
 怖い。
 怖い。

 私はいちばん強いと思っていた。そうでなくてはならないのだから、そうなのだと思っていた。

 違った。私よりも強いひとが居た。誰よりも速く誰よりも的確に誰よりも確実に敵を仕留めることが出来る。躊躇わない。迷いもない。

 超えられると思った。超えなくてはならなかった。なのに。なのに。なのに!

 腹立たしかった。

 諦める姿を見た事がなかった。誰の心が折れてもそのひとだけは折れない。誰の刃が折れても、そのひとの刃だけは研ぎ澄まされて見える。

 血と泥に塗れても負けることだけはない。だから。

 私が本当は強くなんかないことを、思い出させる。

 不安に負けてしまいそうになる弱さがあることを、認めろと言われているような気になる。

 嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。違う。違う。私は、弱くなんか、ない。弱い私では意味が無い。赦されない。

 私が此処に居るのは、戦うため。戦って、勝つため。勝たなければ負けてしまう。負けたら、…死んでしまう。

 そんなことは赦されない。

 あの日死んだ私が、今負ける私を赦さない。
 諦めた結果がこの姿だと、力なく項垂れる小さな私。諦めてはいけないと教えてくれたのが誰なのか思い出せと突きつける。
 戦えと言われて生きる意味を知った私が、諦めていいはずが無い。

 あの男は、何故いつも前を見ているのだろう。不機嫌そうな顔で、笑わないあの男は、俯くことがない。振り返るのはいつも誰かを気遣う時だ。過去の自分の惨めな姿を見るためなどではない。

 何故、いつも、誰よりも速く高く飛べるの。それは私でなくてはならないのに。

 何故、あなたなの。なりたかった私が私の先に居る。私の上を飛んでいる。

 嫌い。嫌い。あの男は気に入らない。消えてしまえばいい。

 ……でも、たとえ私が死ぬ日が来ても、あの男は死なない気がする。私に出来ないことを私の代わりにやってのける気がする。

 嫌い。大嫌い。

 でも、消えてしまっていちばん困るのは、きっとこの私。私より強い。私より速い。私より確実に私のしたいことをやってのける。

 何より嫌なのは、その事実が私を安堵させること。私が折れる日が来ても、あのひとは折れない。私に出来なくても、あのひとには出来る。

 私の護りたいものを、失わずに済む。世界が美しいことを忘れずに居られる。




「オイ。何笑ってやがる。気持ち悪い」
「兵長。私はあなたが嫌いです」
「あ?」
「でも、あなたは強い」
「何言ってんだ。頭でも打ったか」




 世界は、とてもとても美しい。こんなにも沢山の血が流れて、憎しみの目で睨まれても。

 あなたが居る。それだけで世界は美しい。

 血に塗れて地べたに這い蹲ることになったとしても、私の護りたかったものは、きっと消えてなくならない。
 それをさせない力を、私は持ってる。そう。私にはある。力がある。ある。

 そして、私以上に強いひとが、居る。

 私の大切なものは、消えてなくならない。そんなことはさせない。
 消えない。
 きっと。

 弱い自分に気づかされる時、私は振り返ってばかりいた。俯いてばかりいた。今は、そんな時は、前か上を見ている。
 何もかもを背負って、それすらも足枷には足らず、前を行き高く飛ぶそのひとを。
 死ぬなとあの男が言うたびに、妙に腑に落ちて聞こえる。自分は死なないのだと思う。戦えるのだと感じる。
 折れぬ刃を手に入れた気分になる。
 私の大切なものを、失うことなどないのだと思える。

 失いたくないものの中に、余計なものが混じってしまったと感じる。それがとても腹立たしい。


 どうして出逢ってしまったのか、と、時々思う。

 出逢わなければ良かった、と、時々、思う。
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Posted by璃果

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