お付き合い、始めました。7

「またにする」
ドアを開けた瞬間、リヴァイは不機嫌そうな表情に輪をかけた仏頂面になった。
「リヴァイ。逃げるのか」
エルヴィンが笑う。執務室の椅子に座る彼の机の前にはハンジやミケが陣取っていた。
「書類を持ってきたんだろう。入れ」
リヴァイは舌打ちしてずかずかと前に進んだ。
「可愛い新兵が用意した食事なら食えるんだな。今度からずっとミカサに任せようか」
――来やがった。
「ガキじゃねえんだ、要らねえ心配すんじゃねえよ」
書類を机に叩きつける。
「ガキじゃないなら心配かけるんじゃない」
その紙の薄い束を取り上げながらサラリと返した。調査兵団団長に至極最もな返答をされリヴァイは口を一瞬噤む。
「俺が食事しないことで壁外調査に問題でも発生したのか」
「仲間の体調を心配するのはどんな問題が発生するんだ」
「お前は俺の嫁か何かか」
「それはミカサだろう」
……クソが。
「ふはっ、リヴァイ、エルヴィンにしてやられたねえ!」
どんよりしたオーラを放つリヴァイを見て楽しそうにハンジが笑い、ミケですら面白そうに笑みを浮かべて様子を眺めている。
「無理矢理押さえつけて食わせるわけにもいかないしな。厚意でやってくれるミカサをはねつけられるほど、お前も情がないわけでもない。全て丸く収まって、大変結構だ」
リヴァイは憮然とした表情を浮かべた。まとめて削いでやりてえ。
「個人的にはお前の子供が見られるかもしれないというのは、大変嬉しいとは思うが。壁外調査で死なない内にこの手に抱かせてもらいたいものだとも思う。しかしだな、……ミカサはまだ十五だろう」
「あ?」
「お前に似てもミカサに似ても聡明で強くて美しい子供になるだろうしな。実に楽しみだが、リヴァイ、……」
いきなり子供がどうのこうのと言われてリヴァイは呆れたようにエルヴィンを見つめた。何を言いたいのかを察して表情の険悪さに拍車がかかる。
「ああ。安心しろ。ヤってねえ」
「そうか、って、……もう少し控え目な表現は出来ないのか」
「うっへえ、鋼の理性!? つまらないなあ。あ、リヴァイって加虐性ありそうだから、いたいけな女の子にあれこれやらかして焦らして楽しんでるとか?」
「いたいけなガキは俺に刃向かったり悪態ついたり暴力振るおうとしたりしねえだろ」
「あー、抵抗されると燃えるんだね、えっろ!!」
「……ハンジ、下品さでリヴァイと張り合わなくていい」
エルヴィンが額に手を当てる。
「まあ、信じる信じないは私らの裁量にかかってるけどね! リヴァイが嘘言ってない証拠はどこにもないんだし」
「ヤる前にお前らに報告すりゃいいのか」
不機嫌のカタマリのようなリヴァイが腕を組んだままハンジを蹴りつけた。
「えっ、してくれるの!? 何それ面白れえ! ちょっ、いってえ! 何回蹴るんだよリヴァイ!」
「もういい……」
エルヴィンは部下二人のやり取りに項垂れた。
「お前のことは信用している。お前がそう言うならそれが事実だろう」
エルヴィンはやっとのことでそれだけを搾り出した。まったく、ハンジと言いリヴァイと言い、――
「あれはなんだかんだ言って優秀なのは確かだからな。足腰立たなくて使いもんにならなくなったら問題だろうが」
「!!」
執務室にふいに訪れる静けさと戦慄。
(え。足腰立たなくなるくらい何する気なの?)
(どんだけ激しいんだ……)
(報告書見ても並の男性兵士以上にタフなミカサが立てなくなるくらいに、…いやいやいや、おい……)
幹部たちの胸に去来する思いはだいたい同じだった。しかし声に出して突っ込める勇気はない。
「用は済んだ。戻るぞ」
周囲を呆れさせるだけではなく青ざめさせたことに気づかないリヴァイはその場をさっさと去ろうとした。
「あ、リヴァイ。コレ、私とナナバから、ミカサにご褒美。ウチの兵士長にちゃんと食事させてくれたからね」
ハンジが足元に置いていた紙袋をリヴァイに差し出した。
「何だそりゃ」
「我らが兵士長様の部屋で可愛い新兵が肩が凝らずに過ごせるように、寝間着…いや、部屋着」
ため息をつきながらも一応それを受け取ると、リヴァイは来た時と同じようにずかずかと歩いて出て行った。

ミカサは無事で済むのだろうか。残された全員がそう思った。
「うーん、ウケ狙いでナナバとちょっと過ぎない程度に色っぽいの買ったんだけど、…マズかったかなあ」
「おい、ハンジ、何を…」
エルヴィンは困りものの部下の後姿を見て軽い絶望を感じた。

:《悲報》 ミカサさんの貞操と安全が風前の灯。
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